ゴーン……ゴーン……ゴーン……。
新東京に除夜の鐘が鳴り響く。時刻は0時を回って――新たなる年を迎えていた。
新東京のあちらこちらでは、寺社の参拝へ向かう者たちの姿も見られ、ちょっとした賑わいを見せていた。
そんな中、あの男たちの姿はソアル……それも人が好んでくるような場所ではない街外れにある廃工場にあった。正確には、廃工場近くで様子を窺っている。
「タク、どうだ」
「……外には居ないな」
小声で言葉を交わすのは、GDHP刑事・ユーリこと木下有理と同じくGDHPの刑事・タクこと拓山良樹。人呼んで『あぶれる刑事』とはこの2人のことである。
「踏み込むか」
「いつでもいいぜ」
どうやらこの2人、事件に絡んでここへやってきた模様。もっとも事件絡みでなければ、この2人が廃工場へやってくるはずもなく。
それは数日前のことだった。行方不明となっている爆弾を相変わらず探し続けていた2人だったが、ユーリの使っている情報屋が公衆電話から電話をかけてきたのだ。
「木下さん、大変だ! 大変なこと聞いちまった……」
情報屋は声を潜め、焦った様子で喋っていた。
「どうした?」
「正月早々に爆弾使う気だ! 妙な奴らの会話をついさっき聞いちまったんだよぉ……」
「おい、お前今どこだ? 俺が行くまで下手に動くなよ、いいなっ?」
「ソアルだよ、ソアル。木下さん……奴ら、街外れの廃工場で大晦日にさらに仲間集めて相談するって……!」
「だからソアルのどこだ、お前は!」
「ソアルの……あっ、やばいっ!! 木下さん、また後でっ!!」
ガチャン!!
情報屋が思いっきり電話を切った。
「もしもしっ、もしもーしっ!!」
ユーリは切れた電話に向かって強く呼びかけたが、当然聞こえるのは通話音のみである。
大至急ソアルへ向かったユーリはあちこちを探し回ってみたものの、情報屋の姿はまるで見付からなかった。
そして大晦日の朝――情報屋は物言わぬ死体となってソアルを流れる川に捨てられていたのを発見されたのである。遺体には激しい暴行の跡があり、最後に喉を掻き切られたのが致命傷と見られた。
「…………」
情報屋の遺体を目の当たりにした直後、ユーリは無言だった。しかし背中が泣き……そして怒っていた。
「ユーリ」
タクがユーリに声をかけた。
「……止めるなよ、タク。オレは1人でも行くからな」
「誰が止めるかよ」
タクのその言葉に、ユーリが振り返った。
「付き合うぜ」
すっと右手を顔の前に出すタク。ユーリの右手がパンッとタクの右手の手のひらを叩いた。
「全く……格好付けやがって」
苦笑するユーリ。それに対してタクはふっと笑った。
「ダンディだからな」
その後、話を聞き付けた者が2人に協力を申し出て……現在に至る。
さあ、新年最初の一暴れといこうじゃないか。
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