■黒4ダムに乗り込め!■
商品名 アクスディアEX・セイクリッドカウボーイ クリエーター名 氷邑 凍矢
オープニング
 魔皇殿方、お初にお目にかかる。儂はサーチャーの玄鷹と申す。
 貴殿等を呼び出したのは他でもない。

 富山の黒部第4ダムをご存知か?
 そこに、パトモス政府に反抗し、武力で政治を変えようと考えるテロリスト集団「黄金の雷鳥」のメンバーが立て篭もっておる。数名の職員を人質にしてな。
 彼奴等の要求は、打倒パトモスの際に必要な物資。それと引き換えに、職員を解放するとのことだ。
 逮捕は警察、GDHPの仕事であるのは存じておろう。

 貴殿等にお頼み申したいことは、物資調達を名目とした「黄金の雷鳥」逮捕の準備並び、人質の解放だ。
 雪深い場所故、コアヴィークルで現地に行って欲しい。
 物資はGDHPが調達する。
 人質は、できれば全員無傷で解放して欲しい。

 では。ご武運をお祈り申し上げる。
シナリオ傾向 戦略系、戦闘系、救出系
参加PC 彩門・和意
黒4ダムに乗り込め!
●黒4ダム交渉
 黒部川第4発電所こと『黒4ダム』は、富山県東部の黒部川上流に建設されたアーチ式コンクリートダムで、発電に利用する水を確保することを主目的として関西電力によって建設された。
 ダムの高さ(堤高)は186メートルと日本一を誇り、現在でもその記録は破られていない。
 総貯水容量は約2億トンと、北陸地方で屈指の黒部湖を形成する日本を代表するダムのひとつで、総工費は建設当時の1956年費用で513億円。当時の関西電力資本金の5倍という金額だ。作業員延べ人数は1000万人を超え、工事期間中の転落やトラック・トロッコなどによる交通事故等による殉職者は171人。いかにダム建設工事が苦難を極めたかがうかがえる。
 人気ドキュメンタリー番組でその模様が取り上げられ、多数の映画ロケ地にも採用されている。

 …という黒4ダムの解説はさておき。

 そこには、パトモス政府に反抗し、武力で政治を変えようと考えるテロリスト集団「黄金の雷鳥」のメンバーが、黒4ダムの職員数名を人質にして立て篭もっている。
「早くパトモス政府に対抗できる武器を持って来い! でないと、人質を一人ずつ殺害する!」
「食料も持って来い!」
銃を構えたメンバーが、警察組織「ゴッデスデビルヒューマンポリス(以下GDHP)」警備部警備第1課特殊急襲部隊に要求する。GDHPと共に行動している富山県警も、人質がいるのでは迂闊に行動できずに立ち往生している。

「遅くなってすみません!」

 強風と共に聞こえた声は、警察官に協力する賞金稼ぎ「カウボーイ」としてこの事件の解決協力を申し出た彩門・和意(w3b332maoh)のものだった。彼の背中にしがみつき、振り落とされまいとしているのは逢魔の鈴(w3b332ouma)。
 3月とはいえ、黒部はまだ雪深いうえ、強風による視界不良で彼らがコアヴィークルの移動に一苦労だった。コアヴィークルから降りるなり、彩門と鈴ははGDHPのメンバー達に頭を下げた。
「交渉はGDHP、県警の方達にお任せしますが、人質解放は僕達に任せてください」
 顔を上げ、力強くそう言う彩門。それに続き、鈴も手助けを申し出た。
 メンバーが揃ったところで、交渉を開始。GDHPがダムに乗り込み、県警は人質の身の安全を確認、保護することとなった。
「あの……黒4ダムの見取り図を見せていただけませんか?」
「構わんが、どうするつもりだ」
 特殊急襲部隊隊員が、見取り図を鈴に手渡しながら言う。
「見取り図を元に、和意様と侵入しますの」
「この作戦は、僕と鈴さんにしかできないことなんです」
 彩門と鈴は、通風口や排水口、通路などを見取り図を見て、頭の中に詰め込んだ。これで、人質の場所や犯人の人数構成が解れば好都合だ。

●黒4ダム侵入
「お前等、俺達の要求が聞こえなかったのかっ!」
 苛立ってきたのか、テロリストの一人が威嚇発砲した。
「ハンドマイクを貸してください、僕が説得します」
 彩門は県警からハンドマイクを受け取ると、テロリストに説明を始めた。
『今、警察上層部と掛け合っている最中です。物資の調達ですが、雪で車が停まっているいるため、ここに辿り着くまで時間がかかると連絡がありました。食料ですが、温かい食事を皆さんに食べさせたいので、炊き出し配給にしようと思います』
 彩門の炊き出し配給は助かる、と判断したテロリストは、その申し出を許可した。
「わかった。とりあえず、炊き出しの奴だけここに来い!」
 やった、と彩門達は心の中で喜んだ。
『わかりました。何人分の食事を作れば良いのでしょうか?』
「7人分だ。人質にメシを食わす義務はない!」
 テロリストは全部で7人、と判明。外にいるのは、その中でも下っ端の連中だろう。
 
 材料と調理器具等を用意し、彩門と鈴はダム内に向かった。
「お前達が炊き出しか。まぁいい。とっととメシを作れ! 俺達は、ここに立て篭もってから何も食ってねぇんだ!」
 空腹時は人間の本性が出やすいと言われているが、このテロリストはその典型的パターンだろう。
「そう焦らなくても、食事は逃げたりしませんわ。ね、和意様」
「鈴さんの言うとおりです。僕達が温かい食事を用意するまで、暫く待ってください。それと…職員の皆様にも召し上がってもらいたいのですが…」
 と交渉するも、それは断固反対と返された。
 彩門は米を炊き、鈴は豚汁の調理に取り掛かった。長時間何も食べていない、というので、汁物を出すのが良いと思ったからだ。
「和意様、アレの準備は大丈夫ですか?」
「アレですね? 大丈夫ですよ」
 と彩門はウィンクして鈴に返事。
「そこ! 喋ってないでさっさとメシを作れ!」
 炊き出しの場には、2人が怪しい行動をしないよう見張りがいる。この状態で、2人の作戦は成功するのだろうか…。

 一時間後、食料のおにぎりと豚汁が完成した。
「あの…味見、してくださいませんか? 初めて作ったので自信が無くて…」
 鈴が、見張りに豚汁を持ったお椀を差し出す。
「どれ…」
 見張りは、一口飲むと大あくびをし、少しずつ瞼を閉じて壁にもたれかかったまま眠った。
「作戦、成功ですね。では、テロリスト達のところに行きましょう」

 出来立ての食事を持ち、彩門と鈴はテロリスト達がいる場所に向かった。
「遅い! 早く食わせろ!」
 余程空腹だったのか、テロリスト達は次々に食事を要求する。
「ちょっと待っててくださいね、すぐ用意しますから」
 彩門はその間、豚汁に粉状の睡眠薬をバレないように盛った。鈴は、それを見られないようおにぎりと熱いお茶を配っている。
「お待たせしました。冷めないうちにどうぞ」
 冷ます時間も勿体無いと言わんばかりに、テロリスト達はがっついている。中にはお替りをする者もいた。
 満腹になったからなのか、テロリスト達は眠くなり、睡魔に勝てずにその場で寝てしまった。
「こんなにあっさり上手くいくとは思いませんでした…」
 盛った彩門自身、この状態に驚いた。
「和意様、テロリスト達の人数は7人と言っていましたわよね。1人足りないような気がするのですが…」
 鈴にそう言われ、人数を確認した。たしかに、1人足りない。
「残りの1人は、人質の監視役なのでしょう」

●黒4ダム解放
 2人は、夜になるまで時間を稼いだ。
『こちらGDHP。カウボーイ、潜入に成功したか?』
「はい、大丈夫です。僕達は、これから『憑操の術』を使って、見取り図を元に潜入捜査します。そちらに『憑操の術』が使える方がいるようでしたら、協力願います」
『わかった。くれぐれも無茶な行動をしないように』
 GDHPとの連絡を終えた2人は、溝に潜り込んでいる鼠に憑依した。暗い所にいるのなら、夜目もきく。

 探索を続けているうち送電室の様子を窺うことに成功した。そこには、6名の人質が2人1組で縛られ、猿轡を噛まされていた。
「そのまま、大人しくしてろ。でないと!」
 パァン! と銃声が送電室に響いた。
(「僕らに当たらなくてよかったですね…鈴さん」)
(「は、はい…」)
 天井に向けて打たれた銃弾は、憑依している鼠のまん前を通っていった。
 両手の甲に黒いライチョウのタトゥーのある男がリーダーだ、という情報をGDHPから聞いていたので、彩門はすぐに主犯格だとわかった。
 憑依解除をし、人質救出に向かおうとしたその時、彼らと同じく鼠に憑依したGDHPのメンバーが駆けつけた。
「物資が到着した。これで、リーダーは気が緩むだろう。物資は我々と県警が何とかする。その間に、キミ達には人質を救出してもらいたい。頼んだぞ」
 そう伝えると、鼠は素早く移動した。

 天井から送電室に移動した2人は、憑依を解除すると同時に行動を開始した。
「な、何だてめぇ…」
 主犯格が全てを言い終える前に、彩門がワンドの不意打ちで転ばせた。その間、鈴は人質を解放すると、素早く『祖霊の衣』を使い、物質化した祖霊の防衣をまとわせた。
「和意様、こちらは大丈夫ですわ!」
「ありがとう、鈴さん。では…遠慮なくいきます! 鈴さん、皆さん、伏せてください!」
 立ち上がろうとする主犯格に片っ端からデアボリングコレダーのスタンガンで攻撃し、素早く『闇蛛糸』で捕縛した。鈴は、いつでも迎撃できるよう『魍魎の矢』をつがえ、矢を放てるようスタンバイをしている。
「お、おぼえてろっ!」
『闇蜘糸』に縛られたまま、主犯格は逃亡した。
「皆さん、無事ですか?」
「あ、ああ…」
 数日、何も飲み食いしていないということで体力が消耗しているが、外傷は縛られた痕だけだった。それでも、無事救出できたことには変わりない。

 四苦八苦しながらも外に出た主犯格は外に出ることができたが、目の前にはGDHPと県警が立ち塞がっていた。
 送電室にいる彩門から「人質救出、成功しました」という連絡を受けた県警は、ダム内に乗り込んだ。
 食堂で眠りこけているテロリスト6人をそのまま連れ出す、という苦労はあったが、『黄金の雷鳥』メンバー全てを捕らえることができたので、今回の任務は成功した。

「キミ達のおかげで、人質は皆、無傷で解放された。ありがとう」
 富山県警警部は、貢献した2人に礼を述べた。
「皆さんが無事で何よりです。あの…送電室をかなり破損させてしまったのですが…」 
 申し訳無さそうに、彩門が謝る。
「それは大丈夫です。外部破損はあるものの、送電機能は無事です。そこが壊されたら、今頃富山は停電しています。被害地域はありませんのでご安心を」
 GDHP隊員の報告に、彩門が身体の力が抜けた。
「か、和意様!?」
 鈴が彩門の身体を支える。
 
 結果:人質の救出成功、テロリスト全員逮捕。よって、依頼は無事終了したものとみなす。