■マリアナ航空決戦■ |
商品名 |
アクスディアEX・デビルズネットワーク |
クリエーター名 |
ヘタレ提督D |
オープニング |
サーチャー・アベンチュリンだ。
諸君らに緊急の案件を伝える。
オーストラリア北部の都市・ダーウィンの上空にあったテンプルムが移動を開始し、マリアナ諸島方面へ進攻中だ。恐らく、同諸島への駐留が目的だろう。
この方面に敵のテンプルムがあるのは戦略的に拙いが、本来ならば迎撃の任に就くはずの硫黄島基地航空隊が再編中のために動けず、またパトモス本土にいる部隊も、他方への備えのため下手に動かせない。
そのため、手隙の魔軍部隊を以って、これを迎撃する事になった。
恐らく……いや、ほぼ確実に敵は『レギオン』搭載型ネフィリムを用意しているに違いない。
こちらは魔皇ばかりの迎撃部隊だ。暴走によって同士討ちさせられると、以後の作戦に大きな支障を来すだろう。
一応の対策として、魔軍は今回のためだけに、DEX真魔炎剣が使用可能な魔皇を『レギオン対策部隊』として編成している。仮にレギオンが発動されても、『理性があるうちに』彼らが元に戻してくれるはずだ。
しかし、『対策部隊』は敵の優先目標となるだろう。『対策部隊』自体にも戦闘力はあるが、それでも、多数の敵機から攻撃を受けて持ち堪えられるわけではない。
諸君らの任務は、この『対策部隊』を守る事だ。
『対策部隊』に接近する敵を撃破し、ダーウィンテンプルム攻略を支援せよ。
かなり大規模な作戦だ。危険もそれなりになるだろう。
そのつもりで、用心して事に当たってくれ。
諸君らの健闘に期待する。
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シナリオ傾向 |
殲騎戦、護衛 |
参加PC |
錦織・長郎
月島・日和
風羽・シン
河崎・丈治
ロジャー・藤原
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マリアナ航空決戦 |
マリアナ航空決戦
・月島 日和(w3c348)
私は、一面の紫に覆われた空を飛んでいた。
もしもそれがこの身体一つであるとかなら、それは幻想的だったかも知れない。しかし、生憎とそんな事が出来るわけはなく、それどころか私は今、殲騎アシュナードという鎧を身に纏っていた。
『作戦空域までマイナス三〇〇秒。各機、戦闘態勢。周囲への警戒を厳に』
前衛……攻略部隊本隊の指揮官から入った通信に、気を引き締める。
アシュナードは現在、後衛……敵新型ネフィリムへの対策部隊と共に、マリアナ上空へ進出したテンプルム攻略のために飛行していた。
今回、対策部隊を護衛する事になったメンバーのうち、直接的な護衛を行うのは三名だけで、残りの二人は敵へ斬り込む事で間接的護衛を行う事になっている。
『おやおや……団体さんがお出迎えの準備をしているみたいだ』
通信機から入ってきた次の声は、錦織長郎(w3a288)さんのものだった。その声に目をやれば、遠くに小さく見えるテンプルムより出撃するネフィリムが確認出来る。しかし、問題の新型ネフィリムがいるかどうかは、ここからではまだ解らない。
……自分がいつどこで、何のために力を振るうのかというのは、やはり自分で決めるべき事であって、他人に強制されるべきものではないと思う。その点から言って、魔属を暴走させるという今回の新型ネフィリムは、とても不快だ。
大きな力を持っているからこそ、安易に力を振るってはならないし、そうならないように自分を律するべきだと思うから……。
「日和。調子はどうだ?」
「えっ……?」
私の後ろに乗っている逢魔・悠宇の、気遣うような声。私の逢魔というだけではない、大切な人の声。
「え、えぇ。大丈夫よ」
「頼むぜ。俺は、暴走したお前は見たくない」
「……えぇ。私は、自分の意思で戦う。暴走はしない。絶対に」
そのための備えもしてあるし、それに……悠宇もいる。私のすぐ傍に。
神帝軍の思うようにはさせない。させたくない。
『神帝軍接近! 各機散開せよ。任意の発砲を許可!』
指揮官の声が通信機から響き。それにやや遅れて、前衛部隊が活発に動き始める。
「いこう、日和」
「えぇ……!」
私は、アシュナードに魔皇殻……真・水炎を構えさせた。
いつかした約束――悠宇と二人で生き抜くために。
・ロジャー 藤原(w3h484)
敵機接近の報は、俺の機体の通信機にも入ってきていた。
「どうやら、ダンスパーティがスタートするみたいだぜ!」
「欧米か!」
…………。
「いや、欧米人だから! 半分は欧米人だから!」
「あれ。そうだったっけ」
そうだったっけって、おまっ。
『くくっ……。君たちは面白いね。でも、漫才の時間もそろそろ終わりだよ』
その時、明らかに笑いを噛み殺した錦織の声が通信機から飛び込んできた。言われてみれば、敵機はすでに視認出来る位置にいる。確か、軍隊では『らりほー』とか言ったっけ。
「……だな。」
しかし、俺は誰が何と言おうとハーフだ。この点だけは譲れない。精神的苦痛を受けたので、あとでコハクに謝罪と賠償を要求しよう。……いや、ゴメン。冗談だから怒らないで!
……そんな事を考えつつ、俺はDEX真魔炎剣を発動した。
攻略部隊が敵との交戦に入ると、予想どおり連中はレギオンを使ってきた。しかし、すぐさま対策部隊が攻略部隊をぶん殴って、正気を取り戻させる。錦織がDEX真闇蜘糸や真蛇縛呪で味方を拘束して対策部隊に引き渡していたが、随分と準備が良い。
俺と風羽も危ないところだったし、錦織に感謝しなきゃな。……何故か、対策部隊や他の面子は自力で治したようにも見えたのだが。
……ともあれ、一回凌げば一時間は大丈夫だ。俺は攻略部隊からやや後退する対策部隊に随伴しつつ、敵のネフィリム用ボウガンから放たれた矢を真カッターシールドで防ぐ。ガキン、と良い音がした。
「連中、やっぱり対策部隊を狙ってきてやがるな」
恐らくは、攻略部隊と交戦していない連中が迂回しつつ向かってきているのだろう。対策部隊は見事に挟撃されていた。数に勝るって素晴らしい。一度くらい、自分たちが数に勝ってみたいよね。
『発射……!』
月島が真マルチプルミサイルを発射し、向かってくるネフィリムの集団にダメージを負わせる。その損傷した敵を仕留めるのは、錦織の真ブーステッドランチャーだ。二人とも、良い仕事してますねぇ。
『一機撃墜。続いて……二機撃墜』
しかし、敵の数は多い。対策部隊も反撃はするが、こりゃ焼け石に水だ。
「ちっ……」
その時、対策部隊の左翼に矢が降り注いでいるのが見えた。DEX真狼風旋発動、間に合え……!!
通常の三倍以上に速度を増した俺は、何とか矢と味方の間に割り込んで、味方への攻撃を防ぎきる。危ないところだった。
「殲騎を赤く塗っておくべきだった!」
『ディアブロの基本色は赤だと思うのだけれど』
錦織の冷静なツッコミ。……修羅の黄金なのに、何で赤なんだろ。
「ロジャーっ。右から来るよっ!」
「オッケー、任せておけ!」
くそ、息つくヒマも無いな。俺はすぐさま機体を反転して、右側から来る矢を真カッターシールドで弾く。コハクの逢魔能力『祖霊の衣』を真カッターシールドに付与しておいたおかげで全くダメージは無いが、それもいつまで持つか。
『真撃破弾、撃ちます!』
月島は言うが早いか、右側から接近する集団へDEXを放った。避け切れなかった敵機が大破するのが見える。
『彼らも必死なんですね』
『必死なのは、こちらも同じだがね』
錦織は逢魔・幾行とそう会話しながらも、確実に損傷した敵機を撃破していく。
数の上では劣っており、決して楽観出来る戦闘ではない。それでも俺は、この戦闘に負ける気がしなかった。折角『紫の夜』を使った作戦なのだから、勝って終わりたいしな! ……何が折角なのかは、この際ツッコんじゃダメだぜ。
右側より接近する敵機へ、真ワイズマンクロックを宛がってこれを撃破。さらに、大破して逃げる敵へDEX真六方閃を放ち、撃墜!
いいぞベイベー! 数に勝るのは神帝軍だ! 数に勝るけど勝てないのは良く訓練された神帝軍だ!
「ほんとマリアナ上空は地獄だぜ! フゥハハハーハァー!」
・風羽 シン(w3c350)
戦闘開始直後に使われたレギオンの効果から回復してもらった後、俺はレギオン搭載機を破壊するため、主戦場を左から迂回するルートを取っていた。
のだが。
「刹那! 周囲の状況は!」
俺は殲騎ウインドフェザーに真グレートザンバーを振るわせつつ、後席の逢魔・刹那にそう訊いた。俺の視界では、今まさに俺の一撃によってネフィリムが両断されている。
「前から新手。数は……三機!」
俺の機体は、敵機に阻まれて前進出来なくなっていた。刹那の報告を聞きつつも、俺は新たな敵機へ狙いを定める。
ちっ……何て数だ。さすがに、相手はテンプルムか!
「食らえ!」
真ショルダーキャノンを、新手の敵へ発射。敵機は散開するが、弾自体を避ければ良いと思ったのか、そんなに散らばっていない。恐らくは回避したらすぐにこちらへ向かえるよう、態勢を維持したいのだろうが、生憎と真ショルダーキャノンは炸裂弾だ。
炸裂した弾が、中途半端に散開した敵ネフィリムに命中し、ダメージを与える。そのスキに俺は予め合体させていた魔獣殻八咫とDEX真狼風旋を併用し、ネフィリムの懐へと飛び込んだ。
対応が取れない敵の腹部へ向けて、真グレートザンバーで突く。貫かれた敵機は墜落、海上付近で爆発した。
ここに至って、ようやく他の二機も態勢を立て直したらしい。ボウガンを構えて俺を撃とうとするが、遅い!
次の瞬間には、俺は二機目の懐に居た。ザンバーを振るう。長大な刀は、ネフィリムの上半身と下半身を泣き別れさせるに十分だ。
二機撃破。次! 俺は、なおもボウガンを構える敵へ、真シューティングクローを飛ばした。意外な攻撃だったのか、身動き取れないネフィリムをすんなりと爪が貫通する。
「……大分手こずっちまったな」
俺の目的はレギオン搭載機だ。ここで油を売っているわけにもいかない。
「指揮官らしき敵は発見出来ない……。一体どこに……?」
刹那が呟く。指揮系統の混乱を誘うために、俺は指揮官を見つけたら優先的に叩く気だった。だが、その指揮官が見当たらないらしい。居ない、という事は無いはずなのだが。
「仕方無い。レギオンを探そう。恐らく、もっとテンプルム寄りにいるはずだ」
「うん……あ、待って。右前方より新手!」
またか。連中、一体何機いるんだ。
俺は半ばうんざりしながらも、真ショルダーキャノンの狙いを定めた。
・河崎 丈二(w3d312)
戦闘が始まってしばらくしても、俺は戦場よりも高高度の上空を遊弋していた。
「さて、目標はどこだ」
ヘルメットに内臓された液晶モニター。そこへ流れるのは、艦隊から送られてくる索敵情報だ。その束になった情報を、俺は注視する。
敵は前進してこちらを阻む腹積もりらしい。敵機の総数は九十機前後……予想よりは多いが、それでもこちらは前線を押し上げつつある。
戦場を迂回したネフィリムの集団が、やや後方に位置している対策部隊を挟撃しているようだったが、この分だと遠からずテンプルム防衛のために攻撃を中止せざるを得ないだろう。
戦況は有利になりつつあった。
「おっ……」
発見。モニターに転送された情報からすると、レギオン搭載機はテンプルム付近に布陣している。数は一一機か……。
「毒電波発生装置の所在が判明。これより撃破する」
他の皆へそう伝達してから、俺は真ドレッドノートを構えて、レギオン搭載機の集団へと急降下した。
「悪いが、ここで退場願おうか」
真ドレッドノートを、ラピッドショットで発射。上空から突如降り注いだエネルギー弾は、鈍足なレギオン搭載機を破壊する。一機……いや、二機撃破!
「後方から新手! ネフィリムよ」
逢魔・ミズキからの報告に、俺は即答した。
「増援を叩く」
言いつつ機を反転し、増援の敵機と相対させる。
「先にレギオンを叩くべきでは?」
「連中は鈍足の上に非武装だ。増援のネフィリムのほうが厄介だろ、この場合」
向かってくる敵は五機。恐らくレギオン搭載機の危急を見て、慌てて駆けつけてきたのだろう。だが……無駄足だったな。
真クーゲルブリッツ……
「ファイア!」
空戦能力を劇的に強化するこの真魔皇殻には、二〇連装が八基、都合一六〇発の対神魔KEM(運動エネルギーミサイル)が積まれている。そのうちの二〇発を一斉に発射した。
敵機は左右に散開しつつ回避を試みている。……が、俺の本命はKEMじゃない。ミサイルを回避した敵へ向け、俺は真ドレッドノートを放った。
敵機が赤い炎に包まれる。撃破。続いて、俺は別の敵機へも攻撃を開始し、増援の五機を全て撃墜した。
「素人ってワケじゃないが……あまり実戦慣れしていないようだな」
率直な敵の感想を口にする。そこへ通信が割り込んできた。錦織だ。
『実戦は始めてなのかも知れないね。動きが……おっと、そうは問屋が卸さないのだよね!』
通信機の背景で爆発音。
『一機撃墜と。……動きが、こちらに比べてぎこちない』
ふむ……。つまり敵は、新兵同然の兵を送ってきたわけか。
「硫黄島のゼカリアは壊滅。ゼカリアやネフィリムの航続距離は微妙なところだから、パトモス本土からここへ部隊を送るには何時でも呼び出せる殲騎しかない。そして殲騎が相手なら、レギオン搭載機で戦わずに勝利出来る」
まぁ、こんなところだろう。考察をしながらも、俺は機を再び反転させ、レギオン搭載機の集団へ向かう。テンプルム内へ退こうとしているようだが、そうはさせない。
「何と言うか……ホント、レギオンに頼り切った作戦なのね」
苦笑交じりにミズキが呟くと、通信機の向こうで幾行が同意した。
『今回貧乏籤を引いたのは、ぼくたちではなく向こうだった、と……』
真ドレッドノートを連射し、さらにレギオン搭載機一機を撃破。これなら、逃げ込む前に全て叩き落せる。
そう考えて、次の搭載機へ真ドレッドノートを向けた、その時。
「テンプルム内から敵機! 待って、早い……!?」
いきなり、ミズキが驚きの声を上げて。
俺の視界に、剣を振り下ろすネフィリムの姿が映った。
続く |