■【背徳の遺産】焔の宴■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 黒風
オープニング
「皆様、お久し振りです」
 サーチャーのミスリは挨拶したかと思うと、すぐに資料を取り出して依頼の話に入る。
「以前魔皇様方に調査していただいた研究所から押収された資料に載っているスライム、その内の一種が発見されました。これの撃破をお願いします」
 発見されたスライムは炎のブレスを吐くタイプだと言う。スライムが炎のブレス?と首を傾げる魔皇も居たが、ミスリは気にせず話を進める。
「分裂でもしたのでしょう、この種が4体です。炎は本体のどこからでも吐く事ができ、その威力は非常に高いのですが、範囲は広くないとの事です」
 また、本体の動きや耐久力は通常のスライムと大差なく、思考も単純で、基本的には一番目立つ、或いは近くの敵を狙い、連携もないと言う。
 つまり、警戒すべきはブレスだけと言う事だ。
「場所はちょうど山肌が露出した場所なので、ブレスによる延焼など、周囲の環境への心配はありません。確実に仕留めてください」
 単純な戦闘であり、敵もさほど強力ではありませんが、決して油断はなさらぬよう。ミスリはそう言って、この場を締め括った。
シナリオ傾向 戦闘
参加PC 彩門・和意
月村・心
橘・沙槻
【背徳の遺産】焔の宴
●登山
 スライムが発見されたと言う場所へと、三組の魔皇と逢魔が向かっていた。危険なサーバントがいると言う通告を受けたのか、一般の入山は禁止されており、彼らの他には人っ子一人の姿もない。
「お膳立ては充分、と言う訳か」
「なら、尚更逃がす訳にはいかないわね」
 橘・沙槻(w3f501maoh)とサウスウィンド(w3f501ouma)が、自分達の置かれている状況を改めて認識する。スライムを倒さない限り人がこの山へ入る事が出来なくなっている現状を認識すればするほど、しくじる訳にはいかないと言う想いが強くなっていく。
「それを抜きにしても、あの力を放っておくのは危険だ。早急に排除しねえと、いつ大惨事になるか分からん」
 そこへ口を挟んできたのは月村・心(w3d123maoh)だ。彼は特に気負う様子も無く、ただスライムを完殺する事に焦点を絞っている。
「そうですよね〜。危ないですよ〜」
 ノルン(w3d123ouma)も心と同意見らしい。その性格と口調故、あまりそうは感じられないが。
 そんな彼らを尻目に一人考え事をしてる風なのが、彩門・和意(w3b332maoh)だ。
「分裂したスライムが合体して、王様なスライムになったりすると厄介ですね」
「王様なスライムと言うか、元に戻るだけのような気がしますけれど」
 考えがどこか他の者とずれている。鈴(w3b332ouma)のツッコミに「そうなりますかね?」と返しつつ、彼らは更に先へと歩を進める。
 やがて、魔皇達の目の前に大きく開けた空間が見えてきた。あれが今回の戦場となる場所だろう。誰からともなく魔皇殻や魔獣殻の準備を始め、魔皇達は戦場となる地へと足を踏み入れた。

●火炎の威力
 まず先頭に立ったのは和意だ。傍らにはディフレクトウォールを浮かべていつ襲ってこられても対応出来る様にしており、和意の後を他の者達が固めると言う陣形になっている。
 スライムがどこに潜んでいるかが分からないので、防御力の高い和意が誘き出すしかないと考えたが故だ。和意はニードルアーマーを装備した上で鈴に祖霊の衣を付与してもらってもおり、万全とも言える状態で待ち構える。
 やがて、彼等の思惑通り二体のスライムが和意へと炎を吐いてきた。魔皇達はこの機を逃すまいと一気に畳み掛ける。
「そこだ!」
 片方のスライムを沙槻が放った真凍浸弾が捉えた。凍てつく魔弾に撃たれたスライムはその身を凍らせ、動きを止める。更にそこにノルンが重力の檻で追い打ちし、スライムの動きが完全に止まった。
「まず一匹!」
 心が炎の翼をはためかせ、炎の風を呼び凍てついたスライムを焼き尽くす。風が止む頃には、焼け焦げた塊と化した物のみが残されていた。
 その一方、和意を見ていた鈴は驚愕の様子を隠せずにいる。炎を受け止めたディフレクトウォールが完全に融解してしまっていたのだ。
「まさか、これほどの威力とは思いませんでしたね」
 和意が呆れたように呟く。二発受け止めただけでディフレクトウォールが使えなくなってしまったのだ、無理もない。
「これでは祖霊の衣も気休め程度にしかなりませんわね……」
 鈴はウォールだった物を見てその威力を推し量り、一つの結論に至る。
「同じ手はもう使えないと言う訳ね」
 その様子を見ていたサウスウィンドは、鈴とほぼ同時に同じ結論へと至った。想像以上の敵の火力を防ぐ手段が殆ど残されていないと言う現実は、一体を倒し湧き上がる魔皇達の気概を消沈させるには充分とも言えた。

●二体目
 和意が囮となる戦法は使えなくなってしまった為、魔皇達はある程度の塊となって少しずつ進んでいた。目指す先は、先ほど炎を吐いてきたスライムの内のもう片方が居た場所。動きは遅いので、まだそこに居るはずなのだ。
「にしても、ヤバイぐらいの火力だな……」
 心は炎を真インフェルノウィングで受け止めようかとも考えていたのだが、先の結果を見る限りでは恐らく無理だろう。避けるしかない。
 しかし、そんな状況下にありながらも、沙槻は今一つ集中出来ていない。
(あそこの者達は何故制御する事すら難しいものを生み出してしまったのか……。どこで道を踏み外してしまったのか……)
 いくら一息ついているとは言え、こんな時に考え事をしている主の頭をサウスウィンドが割と容赦なくはたいた。
「ちょっと、難しい事は終わってからにしてよ。髪の毛焦げたりするのなんてお断りよ、私」
「あ、ああ、済まない」
 突然の衝撃に沙槻は多少ふらつきつつも謝る。鈴はその様子を見てもっと集中して欲しいですわと思うが、それは告げる必要もなかった。スライムが視認出来る距離に入ったので、皆否応無く集中する。
「どうやら連発は出来ないようですね。手早く決めさせていただきますよ」
「はい、動かないでくださいね〜」
 和意が狼風旋を発動させ駆けるのとほぼ同時に、ノルンが黒き旋風を放つ。身を縛る黒き風を防ぐ事は叶わず、スライムはその身を縛られ、大きく動きが鈍った。
 和意のデアボリングコレダーの雷撃が身を焼き、心のウィングの熱風と沙槻の真マルチプルミサイルが追い打ちを掛ける。三人の魔皇の攻撃でスライムは力尽き、鈴の更なる追撃の必要もなく二体目が地に沈んでいった。

●焔の終焉
 二体目を倒したものの、またしても敵の位置が分からなくなった為、魔皇達は再度慎重に動く事を余儀なくされる。
「ったく、面倒臭い相手だな……」
 心がぼやくが、その言葉は他の者に届く前にかき消される事となった。前列の和意に向けて二方向から炎が吐かれたのだ。
「うおあ!」
「和意様!」
 鈴の悲鳴にも似た声が響く。和意は片方の炎を避ける事が出来ず、直撃を受けてしまったのだ。ニードルアーマーと祖霊の衣のおかげで致命傷は免れたが、かなりのダメージである事は間違いない。
「ギリギリで大丈夫、かしら」
 サウスウィンドは和意のダメージを確認するとすかさず癒しの歌を歌い、和意を癒す。そうしている間に、他の者は一斉にスライムへと攻め入った。
「決めさせてもらう!」
「覚悟していただきますわ」
 沙槻が真凍浸弾を放ち凍らせたスライムへと、魔獣殻の腕カバーを装着した鈴が迫る。あらゆる物を砕くとも言われる恐竜の顎は凍てついたスライムを一撃で噛み砕き、粉々に砕け散らせた。
 一方、もう一体のスライムは心とノルンが相手をしており、心はノルンの援護で動きを止めたスライムを引きずり回している。まるで、おろすかのように高速に。
「磨り潰れろおお!」
「頑張ってください〜」
 心は磨り潰して倒すつもりでいたようだが、やはり魔皇殻等で攻撃する方が効率的だろう。結局、自らもダメージを受ける割に効果は薄かった為、最終的には熱風で止めを刺し、最後の一体も焼け焦げた塊へと姿を変えた。

●残り九種類
「近くに危険はないそうですわ」
「では、これで退治完了ですね」
 鈴が祖霊招来の結果を和意へと伝える。討ち漏らしがない事を確認出来た和意は、傷付いた体を引きずりながらも安堵の笑みを浮かべる。
 その向こうで、心と沙槻が難しい顔をして話し合いをしていた。
「今回も無事に倒せたが……まだまだ残ってるな」
「ああ、資料を見た限りでは、カプセルごとに別々の種類に改造していた様だしな」
 それはすなわち、あの研究所から逃げ出したスライムはまだ半分以上が残っていると言う事。それを考えると気が滅入りそうになるが、ひとまず置いておく事とした。今は、戦いで疲れた体と心を休めるのが先決である。
 魔皇達は焼け焦げた跡が残る更地を後にし、それぞれの場所へと戻っていった。

 残るスライムは、九種類。