「長い間何の連絡も寄越さないで、やっときたと思ったらこれ?」
グレゴール、豊島・香織は、テンプルムからつい最近届いた命令書を片手に、不機嫌そうに言い放つ。
「でも、命令ですし、状況が状況の様ですから……」
仕方ありませんよ、と香織のファンタズマ、シズクがフォローはするものの、香織の機嫌は治りそうにもない。
その命令書に書かれているのは、帰還命令。テンプルムが攻撃を受け消耗しているから戻ってこいと言う内容であった。
「で、戻るんですか?」
「しょうがないじゃない、戻るわよ。こんな所に居たままマザーが倒されでもしたら命取りになりかねないし」
シズクの問いに、香織は相変わらず不機嫌そうに答える。とは言え、一度決めたらその後は手際よく帰還の準備を進めていく。
「シズク、アレの準備をお願い。置いていく訳にはいかないしね」
「分かりました」
香織に言われてシズクが向かった先、地下施設内の隠し扉を通り、さらに奥へと入ったその先には、純白の巨人が佇んでいた……。
「皆様、お久し振りです。豊島・香織に対し殲騎の使用が許可されました」
ミスリは挨拶もそこそこに作戦の説明へと入る。
今尚、以前攻撃した施設に居続けているグレゴールの豊島・香織、及びそのファンタズマのシズクに対し殲騎で攻撃を仕掛けて欲しいのだと言う。
「これまでのデータから、確実に仕留める為には殲騎を使用するのも止む無しと判断されたのでしょう。同時に、周囲への被害も黙認するとの通達をいただきました」
つまりは、殲騎で全力で戦っていいと言う事だ。香織はまだ数体のサーバントを残しているが、殲騎にとっては敵ではないだろう。問題となるのは限られている。
「殲騎を使用する以上、周囲へも被害が出るでしょう。許可こそいただいてはいますが、失敗は許されません」
必ず撃破してください、と言うとともにミスリは大きく頭を下げ、いつもの言葉で締めくくった。
「よろしくお願いします」
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