■【神魔狂奏曲】雑兵殲滅■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 とりる
オープニング
『隊長!敵の数が多すぎます!』
『このままでは住民に被害が!』
 次々と部下から送られてくる報告に、八嶋少尉は焦りを覚えた。

「そんなことは見れば解る!今は住民の安全を確保することを最優先にしろ!
…避難はどれぐらい進んでいるか?」
「約6割ほどです。サーバントの妨害が激しく、誘導が思うように進んでいません」
 オペレーターが不安げに次げた。

「くっ…」
 八嶋少尉は奥歯を噛み締めた。このままでは本当に住民から死傷者が出てしまう――
 今から基地に支援を要請しても恐らく間に合わないだろう。
 出来ることなら自分たちだけで片付けたかったが、意地だけで命は守れない。
 こうなったら………
「デビルズネットワークに連絡を入れろ。至急だ!」
 この際プライドなど、無かった。


「サーチャーのクラヴィーアです。パトモス軍から緊急の連絡が入りました。
旧白石市内に出現したサーバントの数が予想よりも多く、住民の避難が遅れているとのことです。
魔皇様方は至急市内へ向かい、サーバントを一匹残らず殲滅してください。
その間にパトモス軍が住民の避難誘導を行います」
 クラヴィーアの口調から察するに事態は切迫しているようだ。

「パトモス軍からの情報では敵はゴブリン、ゴブリンリーダーが多数に、
一部キメイラ、ミノタウロスも確認されているそうです。
敵は雑魚がほとんどですが、数が多いです。注意してください。
あと、もし逃げ遅れた住民を発見した場合は保護してパトモス軍に引き渡してください。
どうか、お願いします」
 クラヴィーアは最後にそう言って、締め括った。
シナリオ傾向 サーバント退治
参加PC 風見・真也
礼野・智美
月島・日和
ミティ・グリン
ロジャー・藤原
クロウリー・クズノハ
【神魔狂奏曲】雑兵殲滅
●戦いの前に

 八嶋少尉のもとに集まったのは総勢12名の魔皇と逢魔であった。
 それを前にたじろぐ様子もなく、八嶋少尉は話し始めた。
「まずは来てくれたことに感謝する。あまり時間が無いので完結に説明しよう。我々は現在、はっきり言って押されている。敵の数が多すぎるのだ。お前達にはサーバントを減らすことに専念してもらいたい。その間に我々パトモス軍が住民の避難誘導を行う。派手に暴れてもらって構わないが、くれぐれも住民を巻き込まないように注意してくれ。以上だ」
 それだけ言うと、八嶋少尉は足早に持ち場へと戻っていった。

「キッツイ感じの人だな。だがなかなかの美人でもある。俺の好み…ぶほっ!?」
「なに鼻の下伸ばしてんのまったく!これから戦闘なんだよ!気を引き締めなさいよ!」
「ひじ…てつ…みぞ…おち…ぐふっ」
 ロジャー・藤原が逢魔のコハクに派手に突っ込まれた。まあ、自業自得だ。

「戦う前からダメージ喰らってどうするんだ…」
 風見・真也がやれやれといった感じに言う。
「今回は真也様の無茶に私も参加しますよ♪」
 彼の逢魔・シャドウセンが嬉しそうに腕に絡み付いてきた。
「こ、こら!」
 顔を赤らめながら戸惑う真也。

「黄金3、白2、紫1…偏ってんな」
「いいんじゃないです?切り込み系・後方支援系同数。敵で空を飛ぶ可能性のあるのはキメイラだけですね」
「出来るだけ空から攻撃したほうがいいよな、逃げ遅れた人探すのにも都合がいいし…参加逢魔は?」
「ナイトノワール4、レプリカント1、凶骨1です」
「雑魚相手だったら十分だが回復能力持ちなしか…」
「下級サーバントならば忍び寄る闇で対処できますし、これだけナイトノワールがいればきっと大丈夫ですよ」
 礼野・智美と逢魔のユフィラスは味方の編成について話し合っていた。
 味方の戦力を把握しておくのは重要なことだ。

「はい、これ。くれぐれも無茶はしないでね」
「ああ、自分の身くらいは自分で守るさ」
 逢魔の悠宇に真リッピングウィップを渡す月島・日和。彼のことを心配して護身用に、である。
「…それに、お前のこともな」
「うふふ、ありがと」
 この二人は魔皇と逢魔以上の絆で結ばれているようだ。

 クロウリー・クズノハと逢魔・カレンはというと…
「派手に暴れていいんだよな?ふふっ、腕が鳴る」
「暴れすぎて周りに被害を出さないようにしてくだいね。それに味方との連携もちゃんと考えて…ちょっと!聞いてます?クロウ様!」
「Zzzzzz…」
「………」
 このあと彼女の鉄扇が唸ったのは言うまでも無い。

「ミノとかキメだけでも人手がいるのに、大量のゴブで数押しってパターンはちょっと大変そうだね。まるで軍の守る街を襲う為だけに用意されたみたいな編成だけど…」
「…軍の防御が飽和してしまえばゴブリンが民間人のいる地域まで到達しますし、そうなれば…何が起こるかは想像に難くないですね。…群れの編成には人為的な気配を感じますけど、調査や対策は後回しにすべきでしょう」
「まずは絶対に民間人の保護だね。必要なのは速度と気迫かな」
 神帝軍の関与を疑うミティ・グリンとその逢魔・マイ。
 色々思うところはあるが、しかし考えるよりもまずは人命が優先。一見バラバラに見えるメンバーでも思いは皆同じであった。

●始まり

 八嶋少尉の言葉どおり、市内はゴブリンで溢れかえっていた。至る所を破壊して回っている。
「多いな。しかも時間もかけられそうにはないか。速攻で、だが確実に仕留める…!」
 真也がさっそく真魔力弾を使用。指先から放たれた魔弾が数匹のゴブリンを消滅させる。
「活路はわたし達が開きます、白兵主体の方々はそれから突撃してください」
 続いて日和が真マルチプルミサイルを撃ち込む。射出されたミサイル群は白煙の軌跡を描いてゴブリンの群れに吸い込まれたかと思うと、次々に爆発を起こし、吹き飛ばした。

「よし、道は開いた!突っ込むぞ!」
 右手に長刀・タイダルウェイブ、左手に真クロムブレイドと、二刀流構えのロジャーが疾る。
 突っ立っていたゴブリンリーダーの腕を、続いて首を切り落とす。
 その横では…
「わーい!やったよやったよ!見て見てー!」
 至近距離で散弾を喰らい蜂の巣になって倒れてゆくゴブリンの様子に、レミントンM31を携えたコハクが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。その動きに応じてぷるんぷるんと揺れる豊かな双丘。
「……」
 思わず見とれるロジャー。…って、いかんいかん!今は戦闘中だ!
 首をブンブン振って思考を取り戻すと、その辺にいたゴブリンの頭をカチ割った。

「っしゃー!いくぜいくぜいくぜー!!」
 アドレナリンを大分泌させて吶喊するバトルマニア・クロウリー。
 頭に装備したビーストホーンで次々とゴブリンを撥ね飛ばす。
 手に持ったジャンクブレイドでゴブリンリーダーを叩き斬る。
 ついでにシュリケンブーメランをぶん投げる。大アバレだ。

「こんなに町を壊して…許さないんだから」
 ミティも黙ってはいない。真狼風旋で加速し、その可憐な容姿に似合わない真サベイジクローでゴブリンリーダーを八つ裂きにし、白く小さな手に持った無骨なデザートイーグルを放って敵陣を掻き乱す。マグナム弾を喰らったゴブリンの頭が爆ぜ、脳髄が飛び散るがミティはそれを華麗に避けた。風に舞う金色のツインテール。
「…いきます」
 ミティの動きに引き寄せられ、背を向けた敵に向かって今度は戦うメイドさん・マイがミニミをフルオートでぶっ放す。連続で吐き出される5.56mm弾に次々と身を裂かれて倒れてゆくゴブリンたち。

「ふむ…」
 智美はテラーウィングで上空を旋回しつつ様子を見ていた…が、
「俺もいくか…!」
 急降下と共に真シルバーエッジを一閃。
 ゴブリンリーダーを胴から真っ二つにする。
 続いて真獣刃斬を発動、もう一匹のゴブリンリーダーの首を飛ばした。

「さて、だいぶ減ってきましたね。あとは広い場所に誘き寄せて一気に片を付けましょう」
「ああ、そうだな。雑魚は俺たちに任せてくれ。まだキメイラやミノタウロスの姿が見えない。他はそちらを頼む」
 日和の言葉に真也が同意した。ミノタウロスはともかくキメイラは脅威だ。早く倒さねばならない。しかし雑魚も放ってはおけない。

「おっしゃあ任せろ!大物狙いだぜ!」
「ああ、俺もだ」
 やる気まんまんなロジャーとクロウリーだ。

「俺は上空から討ち漏らしがいないか見てくる」
「僕も付いていきます」
 智美とユフィラスである。

「じゃ、ボクは逃げ遅れた人が居ないか探してくるね」
「…無論、私もお供します」
 ミティに続いてマイがミニミのマガジンを換えながら言った。
 ――そして、魔皇たちは分かれて行動を開始した。

●日和・真也
 真也は真ストレンジシューズを用いた機動で敵を撹乱しつつ引き付け、たまに魔力を纏わせた真ムジンノツルギで斬り裂く。
 日和も同様に真・水炎で攻撃しつつぎりぎり追いつけない程度の速度で移動する。
 そうしているうちに開けた十字路へ出た。敵は見事に大多数が引き寄せられている。
「悠宇!」
「セン!」
 二人が逢魔の名を叫ぶ。
「了解」
「わかりました」

上空にいた悠宇とシャドウセンはサーバントの群れを挟み込むように移動し、ほぼ同時に忍び寄る闇を発動。周囲が禍々しい闇へと包まれてゆく。しばらくして、呆けて動かなくなるサーバントたち。そして――
「片付ける!!」
「はあああっ!」
 真也が再び真魔力弾を発動、日和が連続で真マルチプルミサイルを撃ち込む。
 その後、立っているものはいなかった。
「ふう、やっと片付きましたか…」
 流石に魔皇殻の全力・連続使用は堪えたようで、日和がその場に腰を落とす。
 そのとき、急に倒れていたはずのミノタウロスが起き上がり、日和へ向けて突進してきた!
「危ないっ!」
「日和さん避けて!!」
 真也とシャドウセンが叫ぶ。
「――っ!?」
 ブモー!!ブモー!!
 血塗れになりながら一心不乱に向かってくるミノタウロス。
 日和は避けられない悟り、目を瞑るが…

「言っただろ!お前は俺が守るって!」
 悠宇が真リッピングウィップをミノタウロスの腕に絡ませて動きを止めていた。
「この野郎!」
 その隙に真也が真ムジンノツルギで止めを刺す。

「…ありがとう、悠宇」
「いいんだ、日和…」
 二人の顔が近づいてゆく。

「まったく…」
「うふふ。真也様、私達もしますか?」
「なななっ!?」
 逢魔に迫られ、激しく動揺する真也であった。

●ミティ
 ミティとマイは市内を走りながら逃げ遅れた住民がいないか探し回っていた。
 すると…
「こ、こないでぇ!!」
 叫び声。駆けつけてみると、少女がミノタウロスに襲われていた。
 伝説によると、ミノタウロスは雄しか存在せず、時折繁殖のために人間の女性を攫うという…。
「急がなきゃ!」
「ええ!」
 全速力で走るミティとマイ。

「い、いやあああ!!」
 叫ぶ少女。迫るミノタウロス。しかし――
「たあああああっ!!」
 突然もう一人少女が現れ、ミノタウロスへ向けて銃を乱射。
 ブモー!!!!背に銃弾を喰らったミノタウロスは怒り狂い、ターゲットを今しがた現れた少女へと切り替える。
「えっ?えっ?なんで倒れないの??…きゃー!!いやー!!」
 逃げ回る少女。一瞬ミティとマイは唖然としていたが、すぐに助けに入る。


「で、なぜ民間人のあなたが何故こんな無謀なことを?」
 横たわったミノタウロス(死骸)の横でミティが先ほどの少女へ問いかける。
 最初に襲われていたほうの少女は気を失っており、マイに介抱されていた。
「み、民間人じゃないですよ!銃だって持ってます!」
 少女はミティへP90を見せる。
「いや、銃は今のご時世民間人でも入手するのはそれほど難しくはないから…」
「あー!信じて無いですね!じゃあこれならどうですか!」
 少女がミティへ印籠のように何かをつきつける。
「ID…カード?」
「そうです!」
「萩原・月乃…少尉!?」
「そうですそうです!私、これでも軍人さんなんですよ!えっへん!」
「はあ…魔機装鎧小隊の人?」
「いえ違います!ゼカリアのパイロットです!」
「パイロットがなんでここに?」
「いやー、旧仙台基地に配属になったんですけどぉ、迷っちゃいましてぇ。えへへ」
 仙台に行くのにどう迷えば白石の街に辿り着くのだろうか…。ミティは額を押さえた。

●ロジャー・クロウリー

「どうやら大当たりを引いちまったようだぜ…」
「ああ、そのようだ…」
 ロジャーたちの目の前には今にも襲い掛からんとするキメイラと2体のミノタウロスの姿があった。
「キメイラにミノ2匹とは随分豪勢だな!こいつぁ食い切れるか分からないぜ!」
「まったくだ、はっはっはっ!!」
 唸る鉄扇。
「ぐほっ!?」
 昏倒するクロウリー。が、すぐに立ち直る。
「どどどどするんだよ!ボクたちだけじゃ無理だよ!一旦逃げ…いや下がろうよ!」
「そんなこと出来るか!ここで逃げたらロジャー様の名が廃るってもんだ!海賊王に俺はなる!!」
「意味わかんないよ!!」
「とにかく今は一旦下がって…」
「それは出来ん!お前は下がれカレン!うおおおおおっ!!」
 一人突撃するクロウリー。
「マジカ!いくのか!くそう!こうなったらやけだ!コハク!お前も下がってろ!」
 続くロジャー。
 二人に反応してミノタウロスたちが襲ってくる。
「ふっ、いいだろう…その勝負、乗った!!」
 ビーストホーンで真っ向勝負をする気まんまんのクロウリー。
「ちくしょー!!このやろー!!」
 真クロムブレイドに真両断剣を付加して覚悟を決めるロジャー。
「きゃあああああ!!クロウ様ー!!」
「ロジャー!!」
 叫ぶ二人の逢魔。
 そして――

「ふん!」
「はあ…はあ…はあ…」
 地に倒れ伏す2体のミノタウロス。
 額から血を流すクロウリー。
 肩で息をするロジャー。
「ったく危なかったぜ…」
「問題ない!!」
「…さて、次はいよいよメインディッシュか」
「ああ…」
 キメイラを睨み付ける二人。
 グオオオオオオオオ!!!!地を揺るがす咆哮を上げ、キメイラが襲い掛かってきた――

●智美
 討ち洩らしを潰し終え、智美とユフィラスは仲間と合流すべく空を飛んでいた。
「ん?なんだあれは?」
 地上に複数の人影を見つけた。降りてみることにする二人。するとそこには…
「なんじゃこりゃー!?」
「これは…」

 目を瞑り身を横たえているロジャーとクロウリー。
 二人の身体はボロボロ。引っかき傷だらけで、あちこち焦げていた。
 その傍でわんわん泣いているコハクとカレン。
 まさか――
「死んじまったってのか?!」
「死んでねー!生きてるっての!」
「そうだ、死んでいない!」
 急に起き上がるロジャーとクロウリー。
「なんだ、あまりにもボロボロだから死んだのかと思ったぞ。…キメイラはどうした?」
「ああ、倒したぜ。この通りボコボコだけどな。ぐふっ」
「ふふふ、実に素晴らしい戦いだった。がはっ」
 再び倒れるロジャーとクロウリー。
「大丈夫なのか、おい」
「大丈夫ではなさそうですが…報告ついでにパトモス軍の医療班に来てもらいましょう」
「頼む、ユフィラス」

●戦いを終えて
「皆、ご苦労だった。心から感謝する」
 サーバントの殲滅を終えた魔皇たちは再び八嶋少尉のもとへ集まっていた。
 ロジャーとクロウリーは担架の上で横になっている。

「……」
 ロジャーがぼーっと八嶋少尉のほうを見ている。視線を感じた八嶋少尉は頬を染めて身をよじった。
「あ、あまり見ないでもらえるか。この装備はその…恥ずかしいのだ…」
 彼女が着ているのは魔機装鎧エステル。身体にぴったりと密着するスーツ(っていうかぶっちゃけスク水)の上に装甲をつけたようなデザインだ。無論、それゆえボディーラインもはっきり出るわけで、くびれたウェストや豊かなバストも確認できる。実に見事な体型だ。
「なあ少尉さん、ご苦労と思うのなら熱い抱擁の一つもですね…ぐばふっ!!?」
 そう言った瞬間、コハクと八嶋少尉の両方から腹に肘鉄を受けていた。
「お…れは…怪我人…ガクリ」
 意識を失うロジャー。まあ、自業自得だ。

「と、とにかくお前たちの協力のお陰で、若干怪我人は出たものの、住民は全員無事に避難できた。隊長として礼を言う。ありがとう」

「流石にこたえたな。まあ、上手くいったなら何より。ま、食事の一つや二つぐらいおごってもらいたい気分だな」
「そうですね。でしたら、何か美味しいものでも食べに行きましょう」
 真也の言葉に微笑むシャドウセン。

 こうして、魔皇たちの戦いはなんとか無事に終わったのであった。