■【神魔狂奏曲】戦乙女騎士団の挑戦■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 とりる
オープニング
 とある日のパトモス軍旧仙台基地――

「あんた達、暇よね?」
 黒髪のロングヘアの女性士官を前に、高槻博士が唐突に切り出した。
「いえ、毎日訓練に励んでおりますが…」
 女性士官は心の中でまた博士の思い付きが始まったよ…と思った。
「シミュレーターの訓練なんか何度やっても無駄よ無駄。パイロットに必要なのは実戦経験なのよ」
「まあ、ごもっともですが…」
「そういうわけだから、あんた達、魔皇と戦いなさい」
「…と、おっしゃいますと?」
「察しが悪いわねえ。模擬戦よ、模擬戦。相手とかはこっちで用意するから、あんた達は戦うだけでいいわ」
「はあ…」
 断っても権力をかさにゴリ押ししてくることは明白だったので、女性士官は仕方なく頷いた。
「じゃ、よろしくねん。手を抜いちゃダメよ。もちろんあたしも見物させてもらうわ」
「了解しました」
 そういって敬礼した後、博士の私室から出た女性士官は他のメンバーにどう説明しようかと考えながら痛む頭を抑えつつ、通路を歩いてゆくのだった…。


「こんにちは、サーチャーのクラヴィーアです。パトモス軍からゼカリアと殲騎による模擬戦への参加要請が入りました」
 集まった魔皇たちに向かってクラヴィーアが話し始めた。

「それでは模擬戦の概要について説明をさせていただきます。ルールは一対一の個人戦です。試合は実弾を使った実戦形式で行い、先に相手を戦闘不能にした方の勝利となります。場所は現在はパトモス軍所有となっている、旧陸上自衛隊岩沼訓練場を貸してくださるそうです。あ、それから、対戦相手の情報はあとでお渡しする資料に明記されておりますので、そちらをご覧下さい。…それでは魔皇様方、頑張ってください。勝利をお祈りしています」
 最後にそういって、クラヴィーアは微笑んだ。
シナリオ傾向 殲騎戦 模擬戦
参加PC 風祭・烈
黒江・開裡
月村・心
ミティ・グリン
【神魔狂奏曲】戦乙女騎士団の挑戦
●顔合わせ

 旧陸上自衛隊岩沼訓練場――
 殲騎とゼカリアが向かい合う様にして立っていた。

「よぉし集まったわねー!全員整列!」
 拡声器を片手にノリノリで叫んだのは今回の主催者の高槻博士である。
「まずは顔合わせ。対戦相手の顔をよく覚えておくことね」
「…たかが模擬戦、されど模擬戦ってね。油断はしないつもりですよ。ま、よろしくってことで」
 黒江・開裡が眼鏡を直すしぐさをし、三浦大尉に手を差し出す。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
 握手を交わし、微笑む三浦大尉。
 …ふと、開裡の視線が泳ぐ。三浦大尉らヴァルキリーナイツの面々が着用しているのはエステルを改良して稼働時間を延ばした最新式のパイロットスーツだ。つまり、身体にぴったりフィットし、ボディーラインもはっきり出ている訳で…三浦大尉が動く度にその胸のたわわに実った二つの果実が揺れる。
「……」
 ごくりと唾を飲む開裡。
「あ・な・た?もしやとは思いますが、大尉の胸のサイズに釣られた訳ではありませんよね?ねっ?!」
 その様子を見た逢魔であり妻でもあるクレイメーアが開裡の首筋にハンマーを当てながらにっこりと微笑む。
「はい、そうです。違います」
「ならばよろしい」
 そのやりとりを見て三浦大尉はくすりと笑った。

「コレが相手の資料って…なんだ、このデータは? 巨乳だとか貧乳だとか…関係ないデータを入れるぐらいならもっとマシなのをよこせ!!」
 無謀にもそう言い放ったのは月村・心である。もちろん、それは高槻博士に丸聞こえなわけで…
「あぁん?なにあんた?私の作った資料に文句付ける気?対戦相手の装備を予め教えてやってんだから十分すぎるじゃない。むしろコレはアレよ、事前に問題が分かっているテストみたいなもんだわ。あんたらは対策練り放題だったんだからそれで勝てないほうがおかしいの。もし負けたら全裸で逆立ちして訓練場百周ね。もちろん秋月もよ、分かったぁ?」
 キレ気味の高槻博士が心と秋月中尉を睨む。
「ちょ、待て!勝手に決めるな!」
「そうですよ!…というか、この豊乳ってなんですか!!」
「反論は認めない。上官命令。この模擬戦に参加するからには魔皇でも私の指示に従ってもらうわ。ここでは私がルールよ!」
 あまりの横暴さに声も出ない二人。
「全裸で逆立ちして訓練場百週…全裸…ぽっ」
 そんな心の隣で、頬を赤らめる逢魔のノルンであった。

「あはは、アタシは並乳かー」
「あー、なんだ…俺は風祭・烈。よろしく頼む」
「エメラルダです。どうぞ、お手柔らかに」
 烈と逢魔のエメラルダがそれぞれ挨拶を口にする。
 烈は視線を逸らしながらだったが…その辺は察して頂こう。
 エメラルダの方は恭しくお辞儀をした。
「こちらこそ!」
 ニカっと白い歯を見せて笑う菊地少尉。

「ボクはミティ・グリン。よろしくね」
「…逢魔のマイです。どうぞよしなに…って、あら?」
 ミティとマイが挨拶をするが、如月少尉は資料を手に俯いて固まったままだ。
「貧乳…貧乳…」
 どうやら貧乳と書かれたのが相当ショックだったらしい。ああ!如月少尉のテンションが下がってしまった!(謎
「ええと、大丈夫なのかな?」
 ちょっと不安になるミティであった。

「じゃあ始めるわよー!機体に搭乗しなさい!」


●第一回戦 ミティVS如月・司

「それじゃあ…試合開始!!」
 演習場に響く高槻博士の声。

「目標をロック…!」
 先に動いたのは如月機であった。武器の射程・命中精度は人類兵器にアドバンテージがある。
 ドンドンドンと、3度連続して火を噴く92mmライフル。
「つっ!」
 それをミティの殲騎、飛(フェイ)が真ディフレクトウォールで防ぐ。
「相手の狙い、かなり正確です」
「そうみたいだね…」
 真ディフレクトウォールには三つの弾痕が深々と刻まれていた。
「とにかくこのままでは一方的です。接近を」
「判ってる!」
 マイの言葉に答えるミティ。

 所々に作られた遮蔽物を利用しつつ飛は地道に移動してゆく。
 しかし如月機の狙いは完璧で、少しでも姿を見せると砲弾が飛んでくる。今も右肩の装甲を持っていかれたばかりだ。真ディフレクトウォールも既にボロボロである。
「アウトレンジからの狙撃がこれほど脅威だなんて…」
 神帝軍との戦いでは両者とも最大射程はせいぜい1000mが良い所だった。
 しかし対神魔弾と、人類兵器に搭載されているFCSはこれまでの常識を覆した。
「検討する必要がありそうだね…」
 この状況でも口元に笑みすら浮かべるミティ。
「いきましょう」
 マイが後ろから主を促した。
「うん!」
 遮蔽物から飛び出す飛。

 如月少尉は冷静に狙いを定め、ライフルを放つ。
 到底避け切れるものではなく、騎体は何度も砲弾を受け、装甲の破片が飛び散る。だがミティはなんとか直撃だけは避けていた。
「損傷率60%を超過」
「まだいける!」
 淡々と告げるマイにミティが叫ぶ。
「…目標、捕らえました」
「いっけー!」
 真マルチプルミサイルを放つ飛。
 如月機はすぐさまライフルを投げ捨て、背部の兵装ラックを展開し、両手にサブマシンガンを装備して弾幕を張る。
 連続して巻き起こる爆発音。すると――
「なっ!?」
 爆煙を隠れ蓑に飛は更に距離を詰めていた。如月機は即座に射線を飛に集中させる。
「行くよ、困った時の盾頼み!」
「…始めから、盾に頼らなくても済む用意をした方が良かったのでは」
 飛の前方に、急に鉄板が出現する。【こんな事もあろうかと】でマイが隠し持っていたのだった。
 だが薄っぺらい鉄板一枚で20mm砲弾を防げる筈も無く瞬く間に鉄屑と化す。
「もう一回!」
 また鉄板が出現。速攻で砲弾の受け粉々になる。
「更にもう一回!…と、見せかけてっ!!」
 飛は最後の鉄板を如月機に向けて投げつけた。
「!?」
 一瞬視界を遮られる如月機。その隙を逃す筈も無く…
「これで…王手!」
 ほぼゼロ距離まで接近した飛は如月機の頭部に真衝雷符を張り付け、即座に離脱後、起爆。
 ドンという音と共に如月機の頭部が爆ぜた。

「ピピー!はい終了ー!…勝者、ミティ・グリン!」
 ホイッスルの音と共に高槻博士の声が響いた。
「逢魔能力を考慮していなかったのが誤算だったようね。残念だったわね〜如月〜」
「くっ…!」
 悔しそうに奥歯を噛み締める如月少尉。

「…損傷率97%…なんとか勝ちましたね」
「あはは、そうだね」
 勝利に安堵する二人。


●第二回戦 風祭・烈VS菊地・葵

「はい次始めー。負けんじゃないわよー、菊地!」
 高槻博士の声が拡声器から響く。

 動いたのは…今度は両者ほぼ同時だった…が、先に相手を射程に収めたのはやはり菊地機だった。
「さて、まずはご挨拶かな」
 サブマシンガンをフルオートで放つ菊地機。
「その程度で倒せるとでも、敵が簡単に負けてくれるとでも思ったのか?!」
 絶え間なく浴びせられる銃撃を蟹型魔獣殻のシールドで防ぎながら鳥型魔獣殻で上昇させたスピードで急速に接近するドリルカイザー。その上真旋風弾を発動し菊地機の腕を狙う。
「ちっ、やっぱり速いね。…ならっ!」
 真旋風弾をナックルシールドで防御しつつサブマシンガンを放棄し、ヴィブロブレードを抜刀する菊地機。
「捕まえる!!」
 すかさず蟹型魔獣殻の脚で組み付こうとするドリルカイザー。しかし菊地機はナックルシールドで殴りつけ、跳ね飛ばす。
「おおっと!危ない危ない」
「ふっ、なかなかやるな」
「次はこっちからいくよ!」
 構えたブレードの刀身がまばゆい光を放つ。閃神輝掌を付加したのだ。そのまま突進し刀を振り下ろす菊地機。
 ドリルカイザーはシールドで受けようとするが、先の度重なる銃撃で脆くなっていた為、真っ二つに断ち切られてしまう。すぐに真ドリルランスで再度受ける。それでも止まらぬ刃。
「ぐううっ!!」
「どうだい?まだまだいくよ!!」
 二度三度と繰り出される斬撃。
「一撃一撃が重い…!」
 なんとか捌いてはいるものの、受け切れなかった攻撃で騎体の各所にダメージを受けてしまっている。
「エメラルダ!」
「ええ、出し惜しみは無しですわね」
 清水の恵みで今受けたダメージを即座に回復させる。
「そっか。そっちはそれで回復できるんだったね。本当に厄介だよ、逢魔能力は」
「このまま好きにはさせん!いくぞ、エメラルダ、ドリルカイザー」
「はい…それでは、後のことはお願い致しますわ」
「ああ」
 そして、安心したような表情を浮かべた後、ソードピアスを身につけるエメラルダ。
「…はあああっ!!」
 真狼風旋を発動し、更に真アクセラレイトドリルで加速をつけ、凄まじい勢いで吶喊するドリルカイザー。
「さっきよりも速い!?」
 一瞬反応が遅れた。慌ててシールドを構える。
「そんな物で防げると思うなっ!!」
 火花を上げてシールドにめり込んでゆくドリル。ついに限界を迎えたシールドは、砕けた。
「いきなり強くなったね!」
 後退しつつシールドを失った左手でブレードを抜刀して二刀流になる菊地機。
「これでケリをつける…!」
 再度加速するドリルカイザー。
「望む所だ!!」
 同じく加速する菊地機。交差する二機。そして――
 先に膝をついたのは、ドリルカイザーの方だった。
「くそっ!やられたかっ!」
 だが…
 続いて崩れ落ちる菊地機。
「あはは、咄嗟に兆予見撃を発動したんだけどね。そっちの攻撃力が予想以上に高かったみたい。と言う訳で、おあいこだよ」

「ピピー。試合終了ー。結果は引き分け。ま、両方頑張ったんじゃない?」
 
●第三回戦 月村・心VS秋月・真帆

「次次、さっさと初めて頂戴。秋月、分かってるわよねぇ?」
「あんなの納得いきません!私はやりませんからね!」
「無駄口を叩いてる場合か?」
「っ!」
 そんなことを言っているうちに心の殲騎、ガルーダが迫ってきていた。
 ふう、と一息をつき冷静さを取り戻した秋月中尉は、機体の左手に装備したサブマシンガンの狙いを定める。
 その間もガルーダは確実に距離を詰めていた。
「攻撃が来ない?」
「どういうつもりなんでしょう…」
 秋月機の行動を不審に思う心とノルン。
「……よし、射程に入ったわね。ロックオン、そこ!」
 サブマシンガンを放つ秋月機。
 当然、ガルーダは回避運動を取る。が――
 ドォォォン!!!!
 凄まじい揺れがコクピットを襲う。
「なんだ?何が起きた?!」
「ば、バズーカが直撃したみたいですぅ〜」
 泣きそうな声でノルンが言った。
 秋月機はガルーダが回避運動を取ると予測した方向に、右手に装備したバズーカを撃ち込んでいたのだった。
「ちくしょう!やりやがったな!」
 尚も連続して飛んでくるロケット弾を避けつつ最大速度で迫るガルーダ。そして、真ホルスジャベリンを投擲。そしてそれは確実に秋月機を追尾する。
 心は避けると考えていたのだが…
「ふーん、追尾式か。それなら…」
 秋月機は避けなかった。バズーカを盾にして防いだのだ。弾は尽きていたので、誘爆は起こらない。深々と突き刺さるジャベリン。
「これは返すわよ!おまけつきでね!」
 ジャベリンが突き刺さったままのバズーカをガルーダに投げつけ、ついでにサブマシンガンの銃撃を加える。
「ぐああああ!!」
「きゃあああ〜!!」
 またも激しい揺れに見舞われるコクピット。
「もう一つおまけよ!」
 駄目押しに烈光破弾を発動しようとする秋月機。
「ノルン!凝縮する闇だ!」
 これは喰らうと視覚を奪われてしまうのだ。そうなると非常にマズイ。
「は、はひぃ〜」
 ノルンは目を回しつつ発動。SFは黒い発光体に吸い込まれていった。
「そうくると思った!でもね!」
 秋月機は武装をパージ。
「逢魔能力も発動の際には多少の隙は生まれるのよ!」
 肩装甲部を開き、両手でヴィブロナイフを抜刀。突撃する。
「なんだと!?」
「戦場ではそんなことも命取り!」
 秋月機はガルーダの喉元と左腕の付け根に向かってナイフを思いっきり突き立てた。
 ――ほどなくして、機能を停止するガルーダ。
「なんてこった…ガクリ」
「はわわ〜」
 コクピットに突っ伏す心と慌てるノルン。
「…一応あたし、20回以上実戦経験があるんだから。甘く見ないでよね」
 秋月中尉は不敵に笑った。

「勝者、秋月!よくやったわ〜♪」

●第四回戦 黒江・開裡VS三浦・冴子

「はいはい、さっさと始めるー」
「ふふ、手加減はしませんよ」
 三浦大尉はおしとやかに微笑んだ後、戦士の顔になった。

 三浦機が先にサブマシンガンで射撃。射程に劣る殲騎が接近するまでは仕方の無いことだった。
「ちっ、やっぱり射程の差はいかんともしがたいね」
 鳥型魔獣殻を装備した開裡の殲騎、シュヴァルツリヒターは回避運動を取りつつ、接敵。
 真ジャンクブレイドに真音速剣を付加し、真空波を連続で放つ。
 三浦機は冷静にシールドで防御。サブマシンガンで応射。
 あまりの手際のよさにシュヴァルツリヒターは避け切れず、何発か被弾してしまう。
「さすがに狙いは正確ですね」
「だがこの程度!」
 言いながら真ジャンクブレイドに真獣刃斬を付加。
 向かって剣圧を飛ばしつつ、踏み込んで斬り付ける。
 三浦機は動じた様子もなくシールドで受け流す。
 そしてサブマシンガンをフルオートで射撃。ガリガリ装甲を削られるシュヴァルツリヒター。
「ぐ、まだか!」
「3・2・1…いけます!」
 真狼風旋を発動。緊急回避。同時に真ロケットガントレッド射出しサブマシンガンを叩き落とす。
「弾切れの銃でよければ差し上げます」
 素早く背部の兵装ラックを展開。ショットガンを装備し近距離で発射。
「ちっ!」
 避けようとするが騎体の数箇所に風穴を開けられてしまう。
 その後、大きく後退する。
「仕方ない、あれをやるか。必殺!『Strum-Vogel ≪嵐の鳥≫』!!…なんてな」
 真獣刃斬を付与した剣を水平に構え、騎体を竜巻状に回転させ真空波を撒き散らしながら全速で突進。
 避けられないと判断した三浦大尉は白羽陣衝を発動。真空波を多少受けたものの、ほぼ無効化した。
 シュヴァルツリヒターはまたもダメージを蓄積してしまった。
「ぐふっ、隊長というだけのことはあるな…」
「騎体ダメージ、そろそろ限界です」
「なら最後の賭けだ!いくぞ!」
 再び≪嵐の鳥≫を仕掛け接近し、目くらましに真朧明蛍を発動しようとするが…
「させません」
 三浦機はショットガンを投棄し、ブレードを抜刀。シールドで攻撃を受け止めつつ白羽陣衝を再発動。無効化すると同時にダメージを与える。
「厄介な!だが!」
 ギリギリまで接近したシュヴァルツリヒターはその隙に真ボルトスティンガーを三浦機の頭部に突き刺す。
「っ!」
 放電までの一瞬、三浦機も動き、刀を突き出した。
 インパクト。
 そして――二機はほぼ同時に機能を停止した。
 三浦機は頭部を破損、シュヴァルツリヒターの頭部にはヴィブロブレードが突き刺さり、貫通していた……