■【神魔狂奏曲・外伝】スターライト・シンフォニー■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 とりる
オープニング
 SENDAI光のページェント…
 それは毎年12月半ばから大晦日まで間、定禅寺通とあおば通のケヤキ並木を数十万個もの電球で飾り、冬の殺風景な並木を満天の星空の如き輝きに変身させる素晴らしい催し物である。
 仙台に生まれた者にとっては冬の風物詩となっている、とても馴染みの深いイベントだ。
 この時期の通はロマンチックな輝きを見物に集まるカップル達で埋め尽くされる。
 しかし、それをよく思わない者達もいるわけで…

「たーくん、綺麗だね」
「うん、でもゆーちゃんのほうが綺麗だよ」
「そ、そう?ありがとう。うふふ」
「あははは」
寄り添い、楽しそうに談笑する一組のカップル。
 だが…

「そこのお二人さぁーん!!」
「楽しそうですねえ!!いいですねえ!!」
「幸せそうですねえ!!羨ましいですねえ!!」
 突如として全身真っ黒のタイツを身に纏い狼のマスク(パーティ用のやつ)を被った集団が出現。
 股間には二つの電球がピッカンピッカン点灯している。

「ななななんですかあなた達は?!」
「俺達!」
「そう、俺達は!」
「「「「ロンリーウルブズ!!」」」」
「ロンリーウルブズ!?」
「そうだ!我ら孤独な狼!しかし!望んでそうなったわけではないのだ!」
「モテない、クリスマス直前に彼女に振られた、などなど悲惨な事情を持つ集団!」
「貴様達には分かるまい!この俺達の身体を通して出る寂しいオーラが!!」
「わかってたまるか!!」
 突っ込みを入れる彼氏のほう。
「ええい、羨ましいだけでなくうるさい奴め!!」
「というわけで邪魔させていただく!!」
「う、うわぁ!?やめろぉー!!」
 そういうと、狼のマスクを被った全身タイツの集団は彼氏を掻っ攫い消えていった。
「たーくぅーんっ!!」
 夜の街に響く彼女の悲痛な叫び…。
 なお彼氏は数時間後、路地裏で素っ裸になって震えているところを発見されたという…。

 所は変わって、デビルズネットワークタワー・アスカロト。
「というわけで魔皇様方はカップル狩りを行っているテロリスト集団を捕まえてください」
 サーチャー・クラヴィーアが端的に述べた。聖夜だというのに予定はないのだろうか。
「テロリストの手口は光のページェントを見に来たカップルの彼氏のほうを攫い、素っ裸にして去っていくというものです。別に危害を加えるというものではありませんが、放っておくわけにはいきません」
 クラヴィーアは『素っ裸』という単語を軽々と口にしてしまった事に気付きほんのり頬を赤らめる。
「彼らの行動範囲は定禅寺通とあおば通の全域に渡っており、かなり広いです。仙台テンプルムのグレゴールやGDHPのほうは真のテロリスト…神帝軍残党の警戒に当たっていてそこまで手が回せない状態です。それでは、お願いいたします」
 ぺこりと頭を下げるクラヴィーアであった。
シナリオ傾向 ギャグ デート
参加PC 礼野・智美
月島・日和
クロウリー・クズノハ
【神魔狂奏曲・外伝】スターライト・シンフォニー
●恋の大チャンス到来!?
 逢魔・カレンは覚悟を決めていた。今日こそ、今日こそは愛しの魔皇様の物になってみせると。今回の依頼は、名目上はテロリストの捕縛だが事実上はデートである。普段は超鈍感君なあの人もクリスマスムードに飲まれてちょっと落ち着きがない様子。これはチャンス、大チャンスだ。出発前にシャワーを浴び、念入りに身体を洗い、勝負下着まで身に着けてきた。準備は万全だ。拳をぎゅっと握る。そんな感じで逢魔のカレンは自分のやや右前方を歩くクロウリー・クズノハに目をやった。
「…どうした?」
 背後に視線を感じた紅色のロングコートを纏ったクロウリーが振り向く。
「(クロウ様、今宵は私だけのサンタクロースになってくださいまし……なんて言えないわ、きゃっ!)」
 などという妄想をしながら顔を赤らめ悶えるカレン。
「カレン?おい、聞こえているのか?」
「はっ!…あ、はい。聞こえておりますわ。考え事をしていただけです」
 急に我に返りおほほと笑ってごまかす。
「そうか。あー…なんだ、寒くないか?」
「ええ……いえ、ちょっと寒いかもです」
「む?」
「なので、もう少しくっ付いてもよろしいでしょうか?」
 上目遣いにクロウリーを見る。
「…あ、ああ、構わんぞ」
 ポリポリと頬をかくクロウリー。同意を得たカレンはそっと身を寄せる。
「クロウ様、テロリストはラブラブなカップルを襲うそうですから、その…あの…腕も組んでみちゃったりしましょうか?」
 カレンはちょっとした賭けに出る。
「……」
 少々大胆なカレンの言動にごくりと唾を飲むクロウリー。緊張で身体が硬直する。
 バトルマニアで脳みそ筋肉の彼もカップルだらけのこの状況に飲まれてしまっているようだ。周りから見れば腕を組むくらい当然だがウブなこの二人にとっては一大事なのだ。
 数秒後、クロウリーは固まったまま首だけブンブンと縦に振る。
 そしてカレンは彼の太く逞しい腕に自分の腕を絡める…。
 互いの温もりが伝わってゆくのが分かる。自然と心拍数が上がり、顔の赤らみが増す。
 しばしの沈黙があり…
「クロウ様…温かいです…」
「そ、そうか…」
 お互いをこんなにも近くに感じたのは初めてではないだろうか。
「ぺ、ページェント、綺麗ですね」
「あ、ああ…」
 ぎこちない会話。それでも二人は幸せだった。
 しかし、その時…
「そこのお二人さぁーん!」
「幸せそうですねえ!いいですねえ!!」
「羨ましいぞこのやろう!」
「というわけで邪魔させてもらう!!」
 奴らが現れたのだ。狼のマスクを被った全身タイツの集団。
 ――ロンリーウルブズ。
「出たな。カレン、下がっていろ」
「は、はい(ちくしょう!せっかくいいところだったのに邪魔しやがって!!)」
 殺気を漲らせつつクロウリーの後ろに隠れるカレン。
「な、なんだっ?」
 今まで襲ったカップルと違う雰囲気に戸惑うロンリーウルブズ。
「俺達の邪魔をするということがどういう意味か分かってのことだろうなあ!!」
 紅のコートをバサッと脱ぎ捨て雄々しい肉体をあらわにし、マッスルポージングを取るクロウリー。
「「「「!!!?」」」」
 それに圧倒されたロンリーウルブズはズザザーっと後退した。
「こ、これはマズイ気がするよ!」
「そうだな、相手を間違ったようだ…」
「冗談じゃねぇ!俺は逃げるぜ!!」
「あ、待て!!」
 我先にと退散してゆくロンリーウルブズ。
「……」
「……」
 呆気に取られるクロウリーとカレン。
「逃げちゃいましたね…」
「そのようだ」
「クロウ様!すごいです!」
 思わずクロウリーに抱き付くカレン。
「ちょ!カレン?!」
 その後、二人はデートを再開したそうな。
 暴走したカレンがクロウリーをホテル街へと引っ張っていったらしいという話もあったが真実は定かではない。

●二人の聖夜
 月島・日和と逢魔・悠宇はクリスマス限定販売のシャンパンを取りに行った帰りに、ページェントを眺めながら仲良く並んで歩いていた。
「夜出歩くのってあまり好きじゃないけど、たまにはこうしてきれいな夜景を見に来るのもいいわね」
「うん、確かに綺麗だ」
 数万の光が織り成す幻想的な風景に感動を覚える二人。
「ねえ悠宇」
「なんだ?」
「手、繋ごっか」
「えっ!?」
「ほら、皆してるし、いいでしょ?」
「あ、ああ…」
「……」
「……」
 しばしの間。
「もうっ、なにしてるのよっ。こういう時は男の子からするものでしょう」
 ぷうと頬を膨らませ手をワキワキさせる日和。
「す、すまん。気がつかなかった」
 慌てて日和の手をぎゅっと握る。
「うふふ、温かいね」
 微笑む日和。
 柔らかな日和の手。外気が冷たい所為で余計に温かく感じる。
 その温かさは心にも染み入ってくるようで…
「私、幸せだよ。ずっと、こうしていたい…」
「ああ、俺もだ…」
 幸せな時が流れる。
 しかし…
「そこのお二人さぁーん!」
「幸せそうですねえ!いいですねえ!!」
「羨ましいぞこのやろう!」
「というわけで邪魔させてもらう!!」
 また奴らが現れたのだ。――ロンリーウルブズ。
「なにかしらあなた達。お一人で寂しいので八つ当たり、というのもあまり感心できる動機じゃありませんね。せっかくのクリスマスイブに荒っぽいことはしたくありませんけれど、あまり悪さが過ぎるようでしたら席を外していただきますよ?」
「まったく、お前達と付き合ってるとクリスマスイブの貴重な時間がなくなるんだよ。邪魔するんなら手加減しないぞ?」
 さも動じた様子も無く冷静に淡々と話す日和と、ため息を吐きつつ手にした真リッピングウィップをパァーンと鳴らし凄む悠宇。
「きょ、教授、これは一体!?」
「第五の力だよ」
「意味ワカランこと言ってる場合じゃねえ!」
「これはヤヴァイ雰囲気だ、逃げるぞ!」
 わたわたと逃げてゆくロンリーウルブズ。
「何だったのかしら?」
「あいつらがテロリストだったんじゃないのか?逃がしていいのかよ」
「ふふ、いいじゃない。クリスマスだしね。楽しまなきゃ」
「おいおい」
「さ、早く帰ろ!」
 日和は悠宇の手を引き、夜の街へ消えてゆくのだった。

●愛のカタチ
「女役宜しくな。広範囲か…どうする?」
「任せてください。そうですね…とりあえず歩いてみましょうか」
 他の二組と違い、テロリストを捕まえる気マンマンなのは礼野・智美と逢魔・ユフィラスであった。
 彼女役を引き受けたユフィラスの格好は白のセーターに赤と黒のキャミソール型ワンピースの重ね着、そしてその上からストールを羽織っている。脚には黒のオーバーニーソックスを穿いており、とても可愛らしい。その容姿と相まって何処からどう見ても美少女だ。道行く人々の視線を一身に浴びている。カップルの彼氏のほうがユフィラスに見とれて彼女に頬を抓られる光景は何度も見た。それくらいの似合いっぷりだった。
「クリスマスは恋人と二人で過ごす日、でもあるだろ?家が神社でもこの空気は私は好きだ」
「僕もですよ、この時期は空気が色めきますよね」
 にっこり笑うユフィラス。それに智美は思わずドキッとしてしまう。
 それから数十分後…
「けっこう歩いたが出てこないな」
「そうですねえ。何か足りないのかも」
「なんだ?言ってみろ」
「じゃあ耳を貸してください」
「ああ」
 智美はユフィラスに顔を近づける。
 すると…
 ちゅっ。頬に柔らかい感触。
「うふふ、きっとこういうのですよ。あ、唇のほうが良かったですかね?」
「ど、どうだろうな?」
 二人して顔を赤らめる。
 その時…
「そこのお二人さぁーん!」
「幸せそうですねえ!いいですねえ!!」
「羨ましいぞこのやろう!」
「というわけで邪魔させてもらう!!」
 またまた奴らが現れた。ロンリー(以下略)。
「現れたな…」
「効果覿面ですね」
 真シルバーエッジを召喚する智美と、日本刀・雪月華を抜くユフィラス。
「またか!?」
「ええい!今日は妙に厄介な連中ばっかり!」
「しかし今回は引けない!」
「やってやる!やってやるぞ!!」
 うおおおおという叫びと共に襲い掛かってくるロンリー(以下略)。
 数秒後…
「ぐはああ!!」
「げべええ!!」
「ごばああ!!」
「チョバム!!」
 見事に返り討ちに遭いボッコボコにされるロンリー(以下略)。
「安心しろ、峰打ちだ」
「弱い…」
 気絶しぴくぴくと痙攣しているロンリー(以下略)の4人。
 まあ魔皇や逢魔と人間が生身で戦ったら勝敗は明らかだ。
「さあて、GDHPに引き渡してくるか」
「そうですね。でもせっかくですからその後も…」
「分かってる。さっさと片付けよう」
 こうしてロンリーウルブズはあえなくお縄となった。
 智美とユフィラスはその後もデートを目いっぱい楽しんだようだ。