■【神魔狂奏曲】水竜排除■
商品名 アクスディアEX・デビルズネットワーク クリエーター名 とりる
オープニング
「…ふむ、そろそろ頃合か」
 薄暗い部屋で、男が呟いた。
「いよいよ動くのだな」
 側にいた男が即座に反応する。
「ああ、いつまでもパトモスの連中をのさばらせておくわけにもいきませんしね。
それでは…君が行ってくれるかな?秋山くん」

「はっ、お任せください」
 男の視線の先には…年のころは18歳くらいだろうか。
 凛とした顔つきの黒髪のショートカットの少女の姿があった。

「なに、今回は彼らの力を見るだけだ。あまり気張らなくいい」
「はい」
「ふふ、期待しているよ」
 男は冷たく笑った。



「初めまして。サーチャーのクラヴィーアです。
急を要する事態ですのでさっそく本題に移らせていただきます」
 集まった魔皇達を前に、神妙な面持ちで語り出す。

「宮城県を流れる阿武隈川の支流、白石川でウォータードラゴンが暴れています。
その数6体。規模が規模ゆえ、放っておくわけにはいきません。
駐留していたパトモス軍のゼカリア一個分隊が迎撃に出ましたが、苦戦しています。
ただちにこれを支援し、ドラゴンの排除に当たってください」
 これほど纏まった数の…それもドラゴンが出現するのは非常に稀なことだ。
 軍も少々混乱しているらしい。

「なお、旧白石市内に多数の小型サーバントが出現したとの情報もありますが
こちらは軍が出動し対処するとのことです。魔皇様方はドラゴンの相手に専念してください。
それでは、お願いいたします。くれぐれもお気をつけて…」
 クラヴィーアは、深々とお辞儀をした。
シナリオ傾向 殲騎戦 サーバント退治 陰謀?
参加PC 彩門・和意
風祭・烈
黒江・開裡
【神魔狂奏曲】水竜排除
●救援

 白石川で暴れまわる6体のウォータードラゴン。それを押さえるべく二機のゼカリアが果敢に挑んでいた。
 35mmアサルトライフルを撃とうとするも無数に飛んでくる水弾のブレスを避けるのに精一杯でそれどころではなかった。押さえるつもりが逆に完全に押さえ込まれている。
『ぐっ、ちくしょう!』
『やっぱり二機じゃ無理が…うわあああっ!?』
 一機が水弾の直撃を喰らい、転倒してしまう。
 ウォータードラゴン達がここぞとばかりに口を開き、動けないゼカリアへ向けブレスを放った。
 この状態では避けられない。パイロットは目を瞑り覚悟したが…

『えっ?』
 衝撃は来なかった。

『まだ生きてるか? 今回の所は敵同士じゃ無いらしいんでね、背中から撃たないで貰えると嬉しいな』

 恐る恐る目を開いてみると目に前には真カッターシールドを構える漆黒の殲騎の姿。
 黒江・開裡の殲騎、シュヴァルツリヒターであった。
『あまりご無理はなさらないでください』
 開裡の妻であり逢魔のクレイメーアが言う。被弾したゼカリアのパイロットを気遣った言葉だ。

 続いて…
『アスカロトからの依頼で援護に来ました! 大丈夫ですか!?』
 現れたのは二足恐竜型魔獣殻・アローくんと接合した彩門・和意の殲騎、二重の虹。
 DF、闇蜘糸を放って一匹のウォータードラゴンの動きを止める。
『なんとか間に合ったみたい。よかったですわね、和意様』
 和意の逢魔・鈴が後ろから主に向かって微笑みかける。

 それだけではない。
『俺、登場!!』
 響き渡る声。見上げると、橋の上で仁王立ちしている殲騎があった。
 風祭・烈が殲騎、螺旋皇帝ことドリルカイザーである。その名の通り両手にドリルを装備している。

『てりゃあああ!!』
 勢いよく橋から飛び降りると、落下のエネルギーもあわせてドラゴンの背に真ドリルランスを突き立てる。
 グギャアアアアア!!!!
 鮮血を噴出しながら悲鳴を上げるドラゴン。
『おほほ、水竜の串刺しですわ。蒲焼にしたら美味しいでしょうか』
 冷ややかに笑う逢魔・エメラルダ。

『きゅ、救援か?た、助かった、恩に着る』
『危ないところを助けてくれてありがとう、感謝する』
 ゼカリアのパイロット達が続けて礼を口にする。

『いいさ。これも仕事だ。さて、挨拶も済んだところで、トカゲ退治と洒落込もうか。さっさっと終わらせて宮城の牛タンでも賞味に行きたい所だしな』
『もう、牛タンとか言ってる場合じゃありません。 …あ、でも桜の見頃に来られなかったのは少し残念かもですね』
 軽口を叩く夫をたしなめるクレイメーア。

『そうですね。来年のお花見のためにも、早く片付けましょう』
 和意が同意する。白石川の両岸に並ぶ桜は一目千本桜と呼ばれ、それはそれは美しいのだ。

『そんじゃいくかあ!!』
 烈が先ほどのドラゴンにトドメを刺しながら気合を入れた。

●スーパー狩りタイム

 戦いは実に一方的であった。先ほどまで苦戦していたのが嘘のようだ。

 鳥型魔獣殻・ティルオイレンとゴリラ型魔獣殻・斉天と接合したシュヴァルツリヒターが空中から水弾のブレスを避けつつウォータードラゴンへと躍り掛かる。
『…力技は苦手なんだが、なっ!』

 ウォータードラゴンの身体をガシリと掴み、空中へと引き上げる。
 ガアアアア!!!!
 もがくドラゴン。しかしシュヴァルツリヒターは放さない。ゴリラ型魔獣殻で強化された腕力は伊達ではないのだ。
 一定の高度まで達したあと、手を放す。落下してゆくドラゴン。
 開裡がそれを見逃すはずもなく…真狼風旋で再加速し、無防備な首を真ジャンクブレイドで刎ねる。
『…悪く思うなよ』
『なに格好つけてるんですか、似合いませんよ』
『…これでも真面目なんですよ…クレイメーアさん…』
 かっこよく決めたつもりが妻に突っ込まれ、がくりと肩を落とす開裡。


『それじゃ援護、お願いします!』
『頼みましたわ!』
 雷神の短刀を手に突出する二重の虹。
『『了解!!』』
 そして二機のゼカリアから35mmアサルトライフルによる援護射撃が始まる。

『はあっ!!』
 旺盛な砲火にとまどうドラゴンに接近し、アローくんの爪を連続で突き立てる。
 そしてトドメとばかりにショルダーネイルに持たせた、燕貫閃を付加した雷神の短刀を突き刺す。
 ギャアアアアアグエエエエエエ!!!!
 体内に直接送り込まれる電流に断末魔を上げながら、息絶えるドラゴン。

『よし、あとは我々に任せろ!!』
『いくぞ!!』
 武器を120mmロングライフルに持ち替えたゼカリアが一気に反撃に出る。連続する射撃音。
 ………煙が晴れると、そこには穴だらけにされたドラゴンの骸が転がっていた。
 一斉射撃で二匹をあっという間に仕留めてしまった。

『すごい…』
 人類兵器の精密さ、威力に感嘆の声を漏らす和意。
 神魔にも有効な攻撃手段が確立された今、この力が自分たちに向けられたらと思うと、背筋が寒くなった…。
『残るは…あと一匹ですわね』


『その程度の水鉄砲で止められると思うな!』
 接合した蟹型魔獣殻・Gのシールドで水弾のブレスを防御しながら突撃するドリルカイザー。
 そのうえエメラルダの霧のヴェールもかかっているため、命中弾は少ない。それに多少の損傷ならばすぐに清水の恵みで回復できる。
『ふう、私の力を信じて前だけを見て戦ってくれるのは嬉しいんですが、たまには損傷を気にしてもバチは当たりませんよ』
 主の後ろでため息をつくエメラルダ。

『接敵しましたわ!』
『よし、一瞬あれば十分、貫け!唸れ!ドォリルクラッシャァァァー!!』
 真アクセラレイトドリルのブースターを吹かせてドラゴンの身体に深々と食い込ませる。そしてさらに真ロケットガントレットを発射。
 胴体に大穴を空けられたドラゴンは、悲鳴を上げる間もなく崩れ落ちた。

『これで終わりか?』
『そのようですね』
 すぐに和意から返答が来る。

『随分あっけなかったな。拍子抜けだ』
 言いながら身体を伸ばす開裡。…もにゅん。タンデムシートのすぐ後ろに座っていたクレイメーアの胸が頭に当たる。気持ちいい。
『………』
 無言のクレイメーア。
『あの?クレイメーアさん?今のは不可抗力ですよ?その手に持ってるハンマーはなんですか?ちょ、やめ…』
 ゴガァン!ハンマーで頭を殴打され一瞬気を失う開裡。
『まったくもう!敵を全滅させたとは言えまだ戦闘中ですよ!…その、こういうことは後にしてください』
 最後だけ頬を染めつつぼそりと言った。

『ははは…全部聞こえてるよ』
『仲がいいな、お二人さん』
 ゼカリアのパイロット達が笑う。開裡が事前に全員に無線を配っていたのであった。それが裏目に出た?赤面する開裡とクレイメーア。


●暗雲
 数キロほど離れた山中…
「ふむ…予想以上ですね。やはりあの程度では彼らの力を図るのには不十分でしたか」
 神帝の瞳から送られてくる映像を見ながら…グレゴール、秋山がつぶやいた。
「それでは、出られるのですか?」
 傍らにいた彼女のファンタズマが問う。
「ええ、でもあのお方のご指示ですから様子を見るだけです。…いきますよ」
「はい」
 コクピットに乗り込む二人。そして、起動したネフィリムの手に光の槍が出現したかと思うと、それを遠くへ向け投げ放った。


『それにしてもすごいな。魔皇の力は』
『ああ、俺たちだけではあんなに苦戦していたのに、あっという間に片付けちまった』
 興奮気味に話すゼカリアのパイロット達。数の問題もあったが、やはり魔皇の力が加わったのは大きかった。
 そんな会話を聞き、魔皇と逢魔はこそばゆい気持ちになった。第一次神魔戦線末期の…悪魔化による人類への被害の影響で魔属は畏怖と憎悪の対象として見られてきたが、今はデビルズネットワークなどによる懸命の奉仕活動によって徐々に信頼を回復してきているらしい。

『魔皇がついてりゃ百人力だぜ。サーバントなんか怖くねえ』
『ははは、そうd……』
『ん?どうした?』
 急にゼカリアの一機から応答がなくなった。

『おい!ちょっと見ろ!』
 烈が焦ったように叫ぶ。全員が目をやると応答がなくなったゼカリアの腹部に、光の槍のようなものが突き刺さり、貫通していた。がくっと膝を突き、崩れ落ちるゼカリア。

『なんですか!これは!?』
『どこからの攻撃だ?!』
 今までの和やかな空気は消え去り、一気に緊張感が漂う。

『これは…シャイニングフォース…?』
 和意は思考する。今まで幾度となく神属と戦ってきたが、このようなSFは見たことが無い。
 しかしこの神々しい輝きはやはり…
『近くにグレゴールがいるかもしれない!探してください!!』

『その必要はありませんよ』
 冷ややかながらも美しい声が響く。そしてそれとともに、純白のネフィリムが現れた。6体のウィングドラゴンを従えている。
 ゼカリアに突き刺さっていた光の槍がネフィリムの手に舞い戻り、消え失せる。

『今のも、ウォータードラゴンもお前の仕業か』
 烈が問う。
『ええ、よくもまあ意図も簡単に片付けてくださいましたね。これではデータが取れません』
『お前は何者だ!神帝軍の残党か?!何が目的だ!』
『あまりあなた方とお話しする気はありません。それに…私は五月蝿い人が嫌いです。――聖貫槍<シャイニングジャベリン>!!』
 再びネフィリムの手に光の槍が現れ、それを投げつけた。

『くっ!』
 ドリルカイザーに向けられた光の槍をシュヴァルツリヒターが咄嗟に真カッターシールドで防ぐ。深々と突き刺さる光の槍。
 その攻撃が合図となったかのように、ウィングドラゴン達が襲い掛かってきた。

『増援が現れるなんて…!』
 動かなくなったゼカリアを庇いながら応戦する和意。パイロットはまだ生きているかもしれない。守らなければ…。

『ゼカリアは任せた!俺と烈はネフィリムをやる!指揮官さえ潰せば!!』
 開裡は言いながらシュヴァルツリヒターを加速させ、真ジャンクブレイドでネフィリムに斬りかかる。しかし…

『よい判断です。さすがですね黒江・開裡。あの権天使・マタイと渡り合っただけのことはある』
 剣で受け止められてしまった。
『俺も有名人になったものだな!』
 再び真ジャンクブレイドを振り被るが…
『あなたのその力は邪魔です。大人しくしていてください。石像聴言<メガコアギュレイト>!』
『何!?』
 足元から石化してゆくシュヴァルツリヒター。

『今日はここまでです。またお会いしましょう、魔の者達』
『逃がしません!』
 鈴が魍魎の矢を放つが、今度はウィングドラゴンを盾にして防がれてしまった。
『…ごきげんよう』


●新たな敵…そして

『ちっ、逃げられたか。大丈夫か?』
 真魔炎剣で石化したシュヴァルツリヒターを回復させる烈。
『ああ、すまんな。見事にしてやられた』
『面目ないです…』
 しゅんとするクレイメーア。

『いや、気にするな。俺も守ってもらったしな』
『そうです、お互い様ですよ』
 微笑みながらそう付け加えるエメラルダ。

『そう言ってもらえると助かる…』
 苦笑いする開裡。

『みなさん!大丈夫でしたか!ウィングドラゴンは片付けました。あと、ゼカリアのパイロットも無事でした』
 和意の声だ。ゼカリアは大破したものの、コクピットは無事だったようだ。

『助かった。相棒も死ななかったしな。本当に感謝する。…ああ、それと上に報告したんだが、その、お前達と少し話したいそうだ。今繋ぐ』
 ゼカリアのパイロットからの通信。

『初めまして。私はパトモス軍旧仙台基地副司令、高槻・文子よ。まずは部下を助けてくれたことに礼を言うわ』

『副司令!?』
『いきなりお偉いさんだな…』
 突然のことに驚愕する魔皇たち。

『報告は聞いた。どうやら今回のサーバント騒動は神帝軍の残党の仕業だったようね。…サーバントの数、そして未知のSFを使っていたことだけを考えても、けっこうな規模と推測できる。神帝軍のテロリスト…厄介ね。また、なにかあったらよろしくお願いするわ。それじゃ』
 プツリと通信が切れた。

『綺麗な声の人だったな。まだ若そうだし、美人なんだろうな』
 ぼそりと呟く開裡。
『なにか、言いました?』
 にっこりと笑うクレイメーア。
『いいえ』

『しかしやっぱり神帝軍が絡んでいたか。サーバントだけとは今回は様子見か』
『本人もそのようなことを言っていましたし、そのようですね』
 烈の疑問に答える和意。


 神帝軍のテロリスト、恐らく敵は一人だけでは無いだろう。魔皇たちは一抹の不安を覚えるのだった…。


END