「…ふむ、そろそろ頃合か」
薄暗い部屋で、男が呟いた。
「いよいよ動くのだな」
側にいた男が即座に反応する。
「ああ、いつまでもパトモスの連中をのさばらせておくわけにもいきませんしね。
それでは…君が行ってくれるかな?秋山くん」
「はっ、お任せください」
男の視線の先には…年のころは18歳くらいだろうか。
凛とした顔つきの黒髪のショートカットの少女の姿があった。
「なに、今回は彼らの力を見るだけだ。あまり気張らなくいい」
「はい」
「ふふ、期待しているよ」
男は冷たく笑った。
「初めまして。サーチャーのクラヴィーアです。
急を要する事態ですのでさっそく本題に移らせていただきます」
集まった魔皇達を前に、神妙な面持ちで語り出す。
「宮城県を流れる阿武隈川の支流、白石川でウォータードラゴンが暴れています。
その数6体。規模が規模ゆえ、放っておくわけにはいきません。
駐留していたパトモス軍のゼカリア一個分隊が迎撃に出ましたが、苦戦しています。
ただちにこれを支援し、ドラゴンの排除に当たってください」
これほど纏まった数の…それもドラゴンが出現するのは非常に稀なことだ。
軍も少々混乱しているらしい。
「なお、旧白石市内に多数の小型サーバントが出現したとの情報もありますが
こちらは軍が出動し対処するとのことです。魔皇様方はドラゴンの相手に専念してください。
それでは、お願いいたします。くれぐれもお気をつけて…」
クラヴィーアは、深々とお辞儀をした。
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