近頃、旧仙台市内でナースや巫女さんが相次いで行方不明になるという事件が発生。
仙台テンプルムやGDHPは必死に捜査を続けていたが一向に手がかりが掴めないでいた…。
それはさておき、場所はメイド喫茶フェルマータ。
「ミカちゃーん、そろそろお店を閉めるから外回りのお掃除をしてきてちょうだーい」
「はーい、わかりましたー」
店の奥から店長の声。それに答え、箒を手にふりふりのエプロンを揺らしながら外へ出たのはメイドのミカである。
大きな栗色の瞳、同じく栗色のサラサラのロングヘア。ぷっくり膨らんだ淡いピンク色の唇。この店で人気No.1の美人メイドさんだ。ちなみに年齢はヒミツ。
「ふふふ〜ん♪」
鼻歌を口ずさみながらゴミを掃き集めるミカ。すると…
「ちょっとそこのメイドさぁーん」
ぬぅっと表れる黒い影。
「あ、申し訳ありません。今日はもう終わりなんです。また明日お越し下さい、ご主人様…って、きゃー!?」
言いながら振り向くとそこに立っていたのは…見覚えのある脂ぎった顔。
忌まわしい記憶が蘇りミカは思わず悲鳴を上げた。
「あ、あなたは…」
ぷるぷると震えながら後退るミカ。
「いきなり悲鳴を上げるとは失礼デブね。せっかく迎えに来てあげたというのに」
「む、迎え…?」
そう、彼女の前で下品な笑みを浮かべているのはグレゴール・千葉。去年の秋ごろにミカを襲った張本人だ。魔皇達の活躍により一度は退けられたが、また性懲りも無く現れたのだ。
千葉の意味不明な言葉にミカはますます怯えた表情を見せる。
「ぐへへへへ、ついに研究が完成したんデブ。やっと君と一緒になれるんデブ。さあ僕と来るデブよ!」
千葉がじりじりと迫る。ミカは壁際に追い詰められてしまう。もうダメかと思ったその時――
「待てぃ!!」
凛とした声が辺りに響いた。
「何デブ!?」
「えっ…?」
二人が声のした方…店の屋根を見上げると、そこには白銀の全身鎧と仮面を身に身に纏った人物の姿があった。
「な、何者デブ!お前は!」
「貴様に名乗る名前は無い!とうっ!」
仮面の人物は言い放つと跳躍し、千葉とミカの間にすたっと着地した。
「私の市民に手を出すな!外道め!」
びしぃぃっと千葉を指差す。
「ぐっ…!」
その雰囲気に圧倒されてしまう千葉。
「良い所で邪魔が入ったデブ…覚えてやがれー!デブー!」
スタコラサッサと逃げ出した。
「…大丈夫か?」
仮面の人物は腰を抜かしてしまったミカに手を差し伸べる。
「あ、ありがとうございます。助けていただいて…」
「いや、構わん。これも私の使命だ」
「え、えーと貴女のおなま…」
ピコンピコンピコン。ミカの言葉を遮るようにアラームが鳴り、仮面の人物の胸の宝石が赤く点滅しだす。
「すまぬが時間のようだ。また奴が現れるかもしれぬ。くれぐれも気をつけよ。ではさらばだ!」
そういうと、仮面の人物は4枚の翼を広げて飛び去っていった。
純白の羽根が一枚ひらひらと舞い降りる。ミカはそれを拾い、夜空を見上げた。
「もしかして、天使様が助けてくださったのかしら…」
所は変わってデビルズネットワークタワー・アスカロト。
集まった魔皇達に向けてサーチャーのクラヴィーアが頭を下げる。
「旧仙台市内にあるメイド喫茶フェルマータからの依頼です。内容はメイドのミカさんの護衛。ストーカーまがいのグレゴールが出没しており、危険なので守って欲しいとのことです。それでは、どうぞよろしくお願いします」
|