パトモス軍仙台基地・副司令室――
高槻博士は膨大な量の書類に目を通しながら副官の報告に耳を傾けていた。
「ヴァルキリーナイツ第二小隊、目標の捕獲に成功しました」
「よくやったと伝えて」
「はっ。ですが重傷者一名、死者一名、被害は甚大です」
「そう…」
高槻博士は冷たくそれだけ言った。
「本国に人員の補充の要請をして」
「既に行ったのですが…これ以上人員は回せないとのことで…」
「ちっ、あの業突く張りのジジイどもめ…国外に目を向ける前にまず国内の問題をどうにかしなさいよ…!」
机をドンと叩く。書類が散らばった。
「…まあいいわ。あの子を使う。手続きをして頂戴」
「了解しました。新型サーバント出現地点の調査はどうされますか?」
「第三小隊は」
「人的被害は出なかったものの、機体の損傷が激しく、しばらくは…」
「……」
高槻博士は顎に手を当てると数秒だけ考え込む。
「なら魔皇達にやらせて。すぐにデビルズネットワークに連絡を」
所は変わって宮城県西大崎。突如として現れた異形の軍勢によって蹂躙され、廃墟と化した街…。
グレゴール・川村は、そんな惨憺たる光景の町並みを事後調査がてら見物していた。
「ふむ…上々のようですね…」
緒戦でゼカリア一個中隊を壊滅させたのだ。戦果は十分だと言って良い。
「しかし…」
川村は瓦礫の街を歩く。
「愚かなものだ、人類とは。か弱すぎる。やはり我々神属に統治されるべき」
ふと、大きなコンクリート片の下から人間の手が出ていたのが目に映ったが、川村は気にも留めなかった。
「ふふふっ、愚か…実に愚か!!」
デビルズネットワークタワー・アスカロト――
集まった魔皇達へ向けてサーチャーのクラヴィーアが説明を始める。
「パトモス軍から依頼が入りました。内容は先日の新型サーバントの出現地点と思われる宮城県西大崎・東大崎付近の調査です。まだサーバントが残っているかもしれませんので、くれぐれもお気をつけて。それではよろしくお願いします」
そう言って、クラヴィーアは頭を下げた。
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