パトモス軍仙台基地副司令室――
高槻博士は書類で埋め尽くされたデスクの上の、かろうじて自分の周りだけ確保されたスペースに突っ伏していた。
「……」
手には大容量のフラッシュメモリ。博士はそれを弄ぶ。
「……」
これは先日の調査で魔皇が持ち帰った物だ。何でも敵のグレゴールから受け取ったそうな。これは一体どういうことだろう。魔皇が敵と繋がっていた?まあ、そんなことはないと思うが…。内部に裏切り者が居た?可能性はある。敵も一枚岩ではないのかもしれない。
「……」
博士は無言のままフラッシュメモリをパソコンのUSB端子に差し込む。
先に徹底的に解析したところ、ウィルスの類は発見できなかった。
代わりに記録されていた物は…
ディスプレイに様々な情報が表示される。
「……」
敵新型サーバントの詳細な能力。
「……」
そして、敵の拠点と思われる位置情報だった。
何のつもりだ…普通に考えれば罠だが…。
サーバントの能力に関しては捕獲したサンプルのデータと照らし合わせてみた結果、信用に足る物だということが判った。
問題は…敵の拠点。
博士は思考する。しばらくして…がばっと起き上がった。
「いいじゃない。罠だろうが何だろうが、乗ってやろうじゃないの」
そして調査の結果、記録されていたデータの通り栗駒山の地下に地中型テンプルムが存在する事が判明したのだった…。
デビルズネットワークタワー・アスカロト。
サーチャーのクラヴィーアが集まった魔皇達に話し始めた。
「作戦内容を説明します。宮城県栗原市にある栗駒山の山中、地下100mの地点に地中型テンプルムが存在する事が判明。第二次神魔戦線時に召喚されたものと思われます」
マティア神帝軍によって召喚された多数のテンプルムのうち一つがこの地に身を潜めていたのだ。地中型は珍しく、そのため発見が遅れた。
「神帝軍残党グループの拠点と見てまず間違いないでしょう。我々はここに攻勢をかけます。まず本隊が陽動を仕掛け敵守備戦力を引き離し、その隙に別働隊が内部へ侵入。感情エネルギー集積所の破壊やマザーの撃破、コントロールルームの掌握を行います」
今回の作戦は2つの部隊に分かれて行われる。こちらは本隊だ。
「絶対不可侵領域内での戦闘になりますので殲騎は使用できません。よって、魔皇様方にはヴァルキリーナイツ仕様ゼカリアと同等の性能を有した特別機が6機、貸し出されます。尚、特別機に搭乗することが出来るのは魔皇様のみです。逢魔の方が作戦に参加される場合は強制的に特務軍仕様ゼカリアに搭乗していただく事になります。作戦の説明は以上です」
それではお気をつけて、とクラヴィーアは言った。そしてふいにまた口を開く。
「…今まで後手後手に回っていた我々が、初めて先手を取る事になります。名誉挽回のチャンスです。気を引き締めて当たってください」
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