とある日のパトモス軍旧仙台基地――
「あんた達、暇よね?」
黒髪のロングヘアの女性士官を前に、高槻博士が唐突に切り出した。
「いえ、毎日訓練に励んでおりますが…」
女性士官は心の中でまた博士の思い付きが始まったよ…と思った。
「シミュレーターの訓練なんか何度やっても無駄よ無駄。パイロットに必要なのは実戦経験なのよ」
「まあ、ごもっともですが…」
「そういうわけだから、あんた達、魔皇と戦いなさい」
「…と、おっしゃいますと?」
「察しが悪いわねえ。模擬戦よ、模擬戦。相手とかはこっちで用意するから、あんた達は戦うだけでいいわ」
「はあ…」
断っても権力をかさにゴリ押ししてくることは明白だったので、女性士官は仕方なく頷いた。
「じゃ、よろしくねん。手を抜いちゃダメよ。もちろんあたしも見物させてもらうわ」
「了解しました」
そういって敬礼した後、博士の私室から出た女性士官は他のメンバーにどう説明しようかと考えながら痛む頭を抑えつつ、通路を歩いてゆくのだった…。
「こんにちは、サーチャーのクラヴィーアです。パトモス軍からゼカリアと殲騎による模擬戦への参加要請が入りました」
集まった魔皇たちに向かってクラヴィーアが話し始めた。
「それでは模擬戦の概要について説明をさせていただきます。ルールは一対一の個人戦です。試合は実弾を使った実戦形式で行い、先に相手を戦闘不能にした方の勝利となります。場所は現在はパトモス軍所有となっている、旧陸上自衛隊岩沼訓練場を貸してくださるそうです。あ、それから、対戦相手の情報はあとでお渡しする資料に明記されておりますので、そちらをご覧下さい。…それでは魔皇様方、頑張ってください。勝利をお祈りしています」
最後にそういって、クラヴィーアは微笑んだ。
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