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「知りたいのね? 異界とは何かを」
 来訪者に向け高峰沙耶は、ただ淡々と言葉を返す。
「異界‥‥無数の異界、無数の貴方。ある異界では貴方は戦いの中に生き、ある異界では平凡な日常を送る‥‥ある異界では生まれてすらいない」
 高峰は僅かに笑みを浮かべ、来訪者に謎をかけるかの様に言った。
「異界とは、世界の欠片とも、新たな世界とも言うべき存在。その全てが違った姿を持つわ。似通った異界もあるけど、世界を成り立たせる法則からして違う異界もある。どんな異界が生まれるか‥‥そこに法則はない」
 そこまで言って、高峰は口を閉ざす。
 その腕の中で、黒猫のゼーエンが来訪者をじっと見つめていた。まるで、来訪者が理解したかどうかを確かめるかの様に。
 そして、やや間をおいてから、高峰は再び口を開く。
「そうね、パラレルワールド‥‥そういう言葉の方が通りが良いかしら?」
 パラレルワールド‥‥少しずつ違う無数の世界が隣り合って存在しているという、SFの題材の一つ。成り立ちは違うが、界鏡現象とほぼ同じ状態と言える。
 パラレルワールドは無限に存在するため、どんな世界でも存在しうるというのが定説だ。
 異界も同じように、どんな世界でも存在しうる。異界もまた、無限に存在しうるものであるから‥‥
「貴方が行く先にあるのは、異なる世界‥‥ひょっとしたら、貴方の知る世界とは大きく姿を変えた世界が待っているかも知れない。でも、それがその異界にとって正しい姿‥‥」
 言う高峰の顔に僅かな笑みが浮かぶ。
「貴方が異界で体験する事‥‥それを、記録として保管する時を楽しみにしているわ」
※「異界」の公開は終了しました。
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